日産が追加の構造改革へ、事業を断念する分野も
日産自動車が、追加の事業構造改革の策定に着手した。想定を上回る水準で販売台数減と、それに伴う業績悪化が進んだためだ。固定費削減、その他費用の抑制を徹底する考えで、ビジネス展開を縮小する地域や技術分野が出てくる公算が大きい。
先週、日産が開いた2020年3月期第3四半期の決算会見。昨年12月にトップに就いた内田誠社長兼最高経営責任者(CEO)は、「正直に言って想定を超える販売台数減。現状を踏まえ、もう一歩踏み込んだ短期リカバリー計画の策定を始めた」と明かした。同期決算会見に社長が出席するのは異例。トップ自らが説明に立ち、危機感を持って対処する姿勢を示した。
日産の4―12月期の世界販売台数は、前年同期比8・1%減の369万7000台。主力の米国のほか全地域で落ち込んだ。値引きに頼らずに売り切る「販売の質向上」に取り組んでいるが、日産車は、車の魅力に直結する「平均車齢」が高い。世界的な自動車需要減という向かい風にも見舞われ、苦境が深まった。
通期の販売計画を見直し、前回予想比19万台減の505万台(前期比8・4%減)に下方修正した。これに伴い通期連結業績予想についても今期2度目となる下方修正を余儀なくされた。
同社は19年、1万2500人の人員削減、生産能力の10%以上の削減、車種数の10%以上削減などを柱とする事業構造改革を策定した。すでに実行段階にあり、新興国ブランド「ダットサン」のインドネシアでの展開終了などを決めた。
ただ業績悪化が深刻度を増しており、内田社長は「固定費削減、もっと言うと費用削減を含め徹底的に(事業改革を)進める」と強調する。日産の強みを見極め、技術・車種群・地域などの軸で選択と集中を進める方針。日産単独でのビジネス展開が難しい分野は仏ルノー、三菱自動車との企業連合の力を借りる。
内田社長は「(事業展開を)断念せざるを得ないような地域や分野が出てくるかもしれない。もう少し深掘りして明確化する」と説明した。日産幹部は「“デパート”のような総合的な自動車ビジネス展開はもう難しい」と語った。事業構造改革の追加策とともに、中期経営計画のアップデートにも取り組んでおり、これらを合わせて5月に公表予定。
(取材・後藤信之)