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深夜残業が常態化していた企業、働き方改革を実現した「バッジ」戦略

深夜残業が常態化していた企業、働き方改革を実現した「バッジ」戦略

事前に定時退社したい日付のバッジを着用して知らせ、帰りやすくする(同社提供)

ユーメディア(仙台市若林区、今野均社長、022・224・5151)が働き方改革を本格化している。関連制度の充実に加え、育児休暇中の社員へのフォローを厚くするなどして、男性社員を含む全対象者が育休を取得している。今後は業務見直しを進め、リモートワークの導入などにより付加価値の高い働き方を推し進めていく考えだ。(取材=仙台・苦瓜朋子)

ユーメディアは印刷、広告業という職業柄、深夜におよぶ時間外労働が常態化し、終電を逃してタクシーで帰宅する社員も多かった。特に女性社員は家庭との両立が難しく、「結婚と同時に20代後半で退職する人が多かった」と今野社長は振り返る。

10年前、女性社員を対象に子育てとの両立支援を開始。産休、育休を経て短時間勤務で復職する社員が少しずつ増えた。だが、同僚たちが夜遅くまで働く中、早い時間に帰ることに引け目を感じる人も少なくなかった。

「男性の働き方を変えなければ会社は変わらない」。2015年に「新しい働き方委員会」を設置。17年には営業センター(仙台市若林区)を22時に終業とし、原則深夜残業を禁じた。

子育て中の男性社員を中心に発案された「イクメンの日」は社員が月に一度、好きな日に定時退社できる制度だ。事前に希望日のバッジを着用して周りに知らせ、「あの人は明日定時に帰るから、早めに仕事を頼もう」など互いに配慮し、帰りやすくした。

また、17年の育児・介護休業法改正以前から最長2年間の育休制度を設けている。さらに「サポート業務ではなく、中核を担う立場として戻ってきてほしい」(今野社長)との考えから、人事担当者が育休中の社員に定期的に連絡。会社のビジョンや現在の注力事業などを共有する。連絡方法や頻度も個人の事情に合わせて変える。「一人ひとりに目が行き届く中小企業ならではのやり方だ」(同)。15年以降は男性社員も含む全対象者が育休を取得している。

これらの取り組みにより、1カ月の時間外滞在は08年の42時間から19年には31時間に削減。有休取得率は14年の51・3%から63・2%に上昇した。女性社員の勤続年数は4年から9年に伸び、社員に占める女性割合も16・4%から26・0%に増えた。

経済産業省「新・ダイバーシティ経営企業100選」や宮城県・宮城労働局の「魅力ある職場づくりモデル企業」などに選ばれた。働きやすい会社として県内外で知られ、セミナーで自社の取り組みを発信する機会が増えた。関連セミナーの運営受託という形で収益にもつながった。

19年に会議スペースを改装。会議時間の削減で生産性向上を目指す(同社提供)

今後は生産性向上に向けた業務改革を進める。19年に営業センターの一部を改装し、会議室にプロジェクターを設置してペーパーレス化を推進。月に690時間を費やす会議時間を半分とし、参加人数や資料も必要最低限に絞り、創造的な仕事に振り分ける計画だ。

現在、育児中の社員が試験的に自宅勤務を取り入れている。将来的にはリモートワークを全社に導入し、さらなる柔軟な働き方を進める考えだ。

日刊工業新聞2020年2月12日

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