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プラントのデジタル改革で、安全運転・収益性の両立にとどまらない攻めの運営ができる!

【トップが語るDX戦略】JXTGエネルギー宮田知秀常務執行役員

「各プロジェクトのリーダーも連れてきました」と、プラントのデジタル改革を担う若手メンバーを伴ってインタビューに応じたJXTGエネルギーの宮田知秀常務執行役員。先端技術活用の可能性をどこに見いだしているのかー。

デジタルツイン、2020年度中にも

ープラントにおけるデジタル技術の活用状況をどうみますか。
 「日本で本格化するのはこれからですよ。海外の新設プラントでは設備や作業工程などをコンピューター上で再現し、これをシミュレーションしたり予測につなげることで最適化する手法が一般的となっていますが、新設が少なく、高経年な既設プラントが中心の日本では、プラントの3Dデータ化から着手しなければなりません」

ー「デジタルツイン」と呼ばれる考え方ですね。JXTGエネルギーでは実際にどう取り組んでいるのですか。
 「(川崎製油所や水島製油所など)弊社の主力事業所で先行して進め、成果を横展開する方針です。2020年度はいくつかの装置で試験的に完成させたいと思っています。設備管理や運転管理に関係するデータを人工知能(AI)で分析することで、効率的な設備保全のみならず運転の最適化も目指しています」

ーつまりプラントの自動運転が可能になると。
 「そう遠い先の話ではありません」

ーAIベンチャー「プリファードネットワークス」との協業はこうしたことを期待しているのですか。
 「デジタルの目でプラントを俯瞰(ふかん)してみると、これまでとは異なるアプローチで新たな『解』が導き出されるのです。プラントオペレーションは、安全運転と収益性の両立を目指すものですが、高度制御のさらに先をいくディープラーニング(深層学習)の導入によって、気象条件や燃料価格といった外的要因をリアルタイムで反映させた『攻めのオペーレーション』が可能になる。新たな境地が拓けるところに、大きな可能性を感じています」

トップダウンで推進 若手に期待

ー新たな手法を現場に導入するにあたり、どのようなことに重点を置いていますか。
 「デジタルトランスフォーメーション(DX)を経営戦略としてトップダウンで進めるとの意思決定と、個別かつ具体的な取り組みは若手に任せるー。ふたつの方針を徹底することです。実動部隊は、本社と事業所が部門横断的に連携するDX関連のプロジェクトチームですが、もちろん経営陣も世界的なデジタル化の潮流や最新技術に対する感度を高めなれば、適切な判断は下せません。私自身、IT企業やスタートアップのリーダーや技術者との人的なネットワークを構築することを重視していますし、アドバイザリーボードのメンバーを務めている米国のプラント高度制御関連企業に対しては、プラント事業者側の技術ニーズを積極的に発信するよう心がけています」

プラントにおけるデジタル改革を推進する若手の中心メンバーと

「デジタルツインチームは、マレーシアの国営石油企業を訪れ、デジタル化戦略について意見交換してきましたが、新設ばかりでなく既設プラントを多く保有することなどから同じアジアの企業としても参考になる部分が多数あったと聞いています」

施策にスピード感を

ー今後、日本におけるDXを推進するうえで期待することはありますか。
「個別の技術開発支援もそうですが、技術革新を反映しやすいタイムリーな国のルールづくりおよび支援を期待します。弊社のようなプロセス産業の設備保全は技術的にはひとつのシステムで構成されるにもかかわらず、複数の官庁が主管する保安4法(『消防法』『高圧ガス保安法』『労働安全衛生法』『石油コンビナート等災害防止法』)で、一部は重複して規制され、それぞれに対応しなければならないのが実情です。このような状況はデジタル化の足取りを遅らせることにつながらないかと懸念しています。また、デジタル化を進める上で、海外で防爆認証されている電子機器や計測機器などが日本でそのまま使えないといった課題もあります。昨今のデジタル技術の進展はめざましいものがありますから、国の施策立案もこれに応じたスピード感を期待します」

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