インプラント新素材に期待感。強度純チタンの3倍以上
大阪大学の中野貴由教授、松垣あいら特任講師、永瀬丈嗣准教授、立命館大学の飴山恵教授らは、生体適合性の高いチタン系と高強度のコバルトクロム系の生体材料を融合し、新たな生体用インプラント向けの合金を開発した。生体適合性と高強度に加え、組成最適化によって細胞が接着しやすい特性も示す。強度は従来合金比で純チタンの3倍以上ある。研究チームは5年後をめどに実用化を目指したい考えだ。
新合金はチタン、ジルコニウム、ハフニウム、コバルト、クロム、モリブデンが等量に近い割合で混合したハイエントロピー合金。金属電子論や熱力学計算手法などを駆使して開発した。医療用金属材料として主流のチタン系とコバルトクロム系の融合でステンレス合金や既存のコバルトクロム系生体合金と比べ細胞の接着性に優れる。強度も純チタンの3倍以上、チタン合金の約1・6倍あることを確認した。
開発した生体用ハイエントロピー合金は既存合金より約300度C、融点が低下するため、効率的な合金作製に結びつく利点がある。生産性向上で金属3Dプリンターによる造形や原子配列の制御でインプラントなどの高機能化につながる。
従来、医療用に使われる生体用金属材料(貴金属、ステンレス鋼、チタン、チタン合金など)とは性質や合金設計手法も異なる。今回開発の生体用ハイエントロピー合金は、従来合金では対応できなかった医療用の新規生体用金属材料としての活用が期待される。
今回の研究は文部科学省の科学研究費補助金と、内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の一環で実施した。
日刊工業新聞2020年1月29日