経済同友会のSDGsの提言がもっとも経営者にわかりやすい
持続可能な開発目標(SDGs)のゴールである2030年まで残り10年となった。SDGsは取り組みの加速が求められるが、いまだに推進方法に悩む経営者も多い。NECの遠藤信博会長が委員長を務める経済同友会SDGs研究会は19年7月、組織活性化の視点も盛り込んだSDGs実践の提言をまとめた。そこで、経営者に求められるSDGs活用法を遠藤会長に聞いた。
―SDGsをどのように受け止めていますか。 「SDGsは周囲から言われて取り組むものではない。また、投資家の評価につなげるような表面的なことでもない。私は人間社会と企業活動は表裏一体と思う。人間は地球上での生活が長く続くことをのぞんでいる。企業のイシュー(課題)も継続性だ。人間社会のサステナビリティー(持続可能性)に貢献する価値を出し続けることで、企業も長続きする。企業が継続性を保つ指針がSDGsだ」
―企業内でSDGsの認知度や理解に差があります。どうすれば浸透しますか。 「企業文化にする。各社がCSR(企業の社会的責任)活動を推進しているが、本当に社員の活動になっているかというと疑問が残る。本業での社会貢献を要請するSDGsは、企業が作る価値そのものだ。社員に文化としてSDGsが定着すれば、長続きする企業となる」
―企業活動と人間社会が表裏一体という認識を持つ経営者を増やすには。 「生きるとはどういうことなのか、考えてみたらいい。自分が何かを作り上げて評価され、受け入れてもらった時、我々は生きることができる。『生きる』『生かされる』は同等だ。企業は人間社会で『生かされない』と生き残れない。経営者が継続性を最重要と理解すると『生かされる』がわかる」
―では、企業の継続性にはどのようなことが必要になりますか。 「一つは継続的に価値を出す能力を持つこと。もう一つは価値の創造に共感する社員の雇用を続けること。この2点を用意できないと企業は存続しない。企業は“箱”であり、社員が仕事に最大限にエンゲージメント(愛着、契約)するサポートをする役割がある」
―経営トップの役割が重要ですね。 「経営者は、みんなが積極的に価値を生む文化を根付かせる必要がある。企業が100年続いても経営者は交代する。企業に残るのは文化だけだ。良い文化があれば、企業は継続する。SDGsは文化を見直すツールになる」
【記者の目/価値創造の担い手の育成を】
経済同友会の提言は、日本の企業経営者の視点からSDGsの活用法を解き明かしている。SDGsの取り組みに悩む経営者には手引きとして活用できるだろう。「社員は歯車ではなく、価値創造の担い手」との表現が印象的だ。人間社会に貢献する意欲を持つ社員を増やすことが経営者の使命であり、SDGs達成のカギとなる。(編集委員・松木喬)