人生が変わる…「手帳」の上手な使い方はこれだ!
2020年が幕を開けた。新しく何かを始め、自分を変えるには絶好の機会だ。そこで、少しの工夫で暮らし方や仕事のスキルをアップデートできる方法を専門家に聞いてみた。
手帳を活用して時間を上手に管理すれば、仕事を効率よく進められる。手帳活用コンサルタントの谷口和信さんは、大手ゼネコンで働きながら手帳を使って仕事を効率化し、残業を大幅に減らした。その経験を基にした「仕事が速くなる!PDCA手帳術」などの著書を持つ谷口さんにビジネスパーソンが実践できる手帳活用術を聞いた。(聞き手・葭本隆太)
<行動予定を記入しよう>
―仕事を効率よく進めるための手帳活用術を教えてください。
自分の行動予定を書き入れることが一番大事だと思う。学校の時間割のように時間の枠と仕事の内容をあらかじめ示した方がその通りに動きやすくなる。私は毎朝その日にやるべき仕事を書き出してアポイントがない空白の時間帯にそれらの仕事を記入している。
―時間割はどれくらいの単位で記入すべきですか。
一つの枠を30分―1時間程度に細切れにすると全体の計画が狂いにくい。例えばプレゼン用資料を30枚作る場合、1枚30分必要であればその1枚単位で記入する。小さな単位の積み重ねによって上手に管理でき、例え一つの枠が終わらず翌日に繰り越しても大きな影響を及ぼしにくい。
―時間割を作っても緊急の仕事が入ることがあります。
その都度、どれが翌日以降に繰り越せるかを考える。基本的には締め切りギリギリのスケジュールを立てないことが大事だ。
―数カ月など中長期に及ぶ仕事はどう管理すればよいですか。
大きな仕事の塊も30―1時間程度の最小単位まで割るとよい。最終の締め切りから逆算して数週間単位で達成すべきベンチマークを置き、そこまでの仕事を1日単位に分割していく。
<振り返りが大事>
―著書では手帳には予定だけでなく実際の行動を記録する重要性も指摘されています。
(記録する重要性は)家計簿と一緒。お金の使途を記入する習慣をつけると「パチンコ3万円」などの無駄遣いを書きたくなくなり、辞めようという気持ちが働く。時間も同様で「ネットサーフィン2時間」などの無駄遣いは記録したくないと考えて行動を控える。そうして成果につながらない行動が減っていく。
―その日の感情を書くことも推奨されています。
(感情を書き入れて振り返ると)自分を客観視できる。例えば誰かと会話してイライラした時に相手の言い方に問題があると思っても、それは自分の受け止め方の問題かもしれない。(感情の記録を振り返ると)自己を見つめ直して冷静になれるし、次の機会に感情的にならずに済む。また、同僚に対して「こんな仕事も簡単にこなせないのか」と思ったら、それは自分がその仕事が得意だからかもしれない。客観視することで自分の強みが見つかる可能性がある。記入した内容を振り返ることは大事だ。
―ビジネスパーソンにオススメの手帳の仕様はありますか。
その人が何をしたいのかで変わる。アポを管理するだけであれば、スマートフォンのカレンダー機能でもいいかもしれない。ただ、私は時間単位の行動予定と実際にやったことを並べて書いて欲しいと思っているので、1日の時間軸が入った手帳を使って欲しい。
―デジタルツールで予定を管理する人が増えています。
私もバリバリ使っている。(デジタルツールは)予定に変更があった場合の修正が容易だし、(毎週の会議など)繰り返しの予定の設定も一度の作業で済む。手帳で何度も書くのは手間だ。それにアポイントの予定をアラームで伝えてくれる機能も便利だ。
―その中であえて手帳を使うメリットはどこにありますか。
気づいたことやちょっとしたメモを書き入れたりマルを付けて矢印を引いたり好きなように書けることだと思う。自分の予定と実際の行動の記録を記入して見比べるという使い方では手書きの方がわかりやすく書けるように感じるし、私は手書きしたいと思う。
―双方にメリットがあると考えると併用がオススメですか。
手帳もデジタルもただの道具。それぞれが目的に応じて使いやすいところをいいとこ取りすればよいと思う。
<次のステップの道しるべ>
―なぜ手帳の活用を始めたのですか。
10年ほど前、長時間労働が続いて鬱(うつ)状態になっていた。ちょうどその頃に本を読むようになり、なんとなく図書館で借りたビジネス書で紹介されていた仕事術が面白そうと思い始めたら仕事の効率が上がった。それまで手帳にはアポしか書いていなかった。やることリストを作るところから始めたと思う。
―どのように活用のスキルを高めたのですか。
結果が出るともっと実施したくなるもので、他のビジネス書なども参考にしながらどんどん記入する内容を増やし、効果が実感できる内容を残して今の使い方になった。今では1日1ページを使う自作のフォーマットを使っており、やることリストや行動記録、その日のよかったこと、自分を褒めたくなることなどを記入している。
―谷口さんにとって手帳とは何ですか。
自分を成長させてくれるツールだ。「こういう仕事にこれくらい時間がかかる」や「これが好きでこれが嫌い」など自分の今を知ることができる。それは次のステップへの道しるべになる。私は(手帳の活用によって)残業が大幅に減ったし、感情的になることもなくなった。仮に「1億円あげるから(手帳活用を始める前の)10年前に戻れ」と言われても断るくらい違う。
【略歴】手帳活用コンサルタント。1966年生まれ。92年大手ゼネコン入社。05年に月間の残業時間が100時間超の長時間労働が続いたストレスを主要因に軽度の鬱を発症。その後に手帳を活用した時間管理・タスク管理術で仕事を効率化し、鬱を克服した。現在では月間残業時間は20時間程度。11年以降に手帳の使い方がメディアに取り上げられるようになる。現在は会社員として働きながら、手帳術などを伝えるセミナーや勉強会を開いている。著書に「仕事が速くなる!PDCA手帳術」(明日香出版社)「時短と成果が両立する仕事の『見える化』『記録術』」(同)。