「ヘリウムがない」日本物理学会などが声明、入手難と価格高騰を懸念
日本物理学会、日本化学会、日本天文学会や大学など計47機関は、需給逼迫(ひっぱく)が続く“ヘリウム危機”に対し、リサイクル推進の予算枠や規制緩和を求める声明を出した。超電導や量子技術など低温工学で必須のヘリウムは、入手難と価格高騰が続く。大規模大学が持つ再生設備を他機関が共同利用する場合の制度整備や、光ファイバーや半導体の製造現場からの回収技術開発などが必要だ。社会の理解と政府の後押しを求めた。
緊急共同声明「ヘリウムリサイクル社会を目指して」は学会や大学、国立研究開発法人、NTT物性科学基礎研究所などがまとめた。他ガスより安全性の高いヘリウム向けの特別の制度整備、回収再液化システムの導入推進、精製や代替物質の研究促進、将来の危機に備えた備蓄施設の整備などを掲げた。
会見で日本物理学会の永江知文会長(京都大学教授)は「会員約1万8000人の半分が低温工学の物性物理を手がけ、原子核や素粒子の研究も超電導技術でヘリウムを使っている」と、研究現場で影響が大きいことを強調した。
日刊工業新聞12月23日