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仕事に感情を持ち込むべきか、持ち込まないべきか

自分の感情を伝えてみよう、喜怒哀楽が行き交う職場に

「顔で笑って心で泣いて」、皆さんはこのような気持ちで仕事をしてはいないだろうか。つらいときはつらい、と言えているか、その気持ちを相談できる相手はいるだろうか。日本ではよく「仕事に感情を持ち込んではいけない」と言われる。確かに、個人的な好き嫌いや私生活における負の感情を持ち込まれたら、仕事は進まない。しかし、仕事そのものや顧客・同僚等に対して、自身の感情を押し殺すことが、本当に望ましいことなのだろうか。

感情を表に出さないで我慢するとどうなるか考えてみよう。まず、ストレスがたまる。ストレスは心を乱し、疲弊させる。それでも頑張ろうと自分の気持ちにふたをすると、今度は顧客や同僚の気持ちにも鈍感になり、誰かに満足してもらえる仕事ができたか、誰かを傷つけていないか、検証もできなくなる。

それを放置すると、大抵はどこかで限界が来る。ある日それが爆発し仕事や人間関係のトラブルを起こしてしまうか、精神的に参ってしまうか、どちらかであろう。それがハラスメントやメンタル疾患による休職を招くことになる。こうならないために、職場内では感情を大いに出せばよいと考える。人間はロボットではない。相手を傷つけない、すなわち負の連鎖を起こさない限りは口に出してみよう。

例えば、「お客さまがこちらの言い分を聞いてくれず、交渉がうまくいかなかった」というケース。悔しさや怒りがこみ上げてくるだろうが、それを素直に周囲に打ち明けてほしい。また、上司や先輩の立場なら、その「うまくいかなかった交渉」という事実にだけ目を向けず、気持ちに寄り添い、共感してあげてほしい。言語化することで気持ちが落ち着くし、何をサポートすればよいか明確になる。一方で、うれしい等のポジティブな感情は、職場を活気づけてくれるだろう。

前提として、職場に多様な感情を受け止められる雰囲気がほしい。「気持ちを打ち明けるなんて、面倒な人間だと思われないだろうか」と遠慮してしまう人もいるかもしれないが、喜怒哀楽が行き交う職場は、とても人間的ではないだろうか。人を本気で動かすのは感情である。それを理解していてこそ、心のこもった仕事ができるはずである。

(文=高橋美紀<中小企業診断士>)
日刊工業新聞2019年12月17日

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