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世界が支持する日本の紙おむつ、製造の要は「トラブル対策」

紙おむつの生産現場で、IoT(モノのインターネット)や人工知能(AI)の活用が進んでいる。高齢化が進めば需要増が見込まれる市場である上、日本製の紙おむつは海外からも支持されている。一方、生産現場では人手不足が深刻化しており、各社は最新技術の活用で課題に挑んでいる。(門脇花梨)

【世界の状況把握】

「マザー工場として、世界のどこの工場でどんなトラブルが起きているかわかるようにしている」。花王栃木工場(栃木県市貝町)の河尻浩宣工場長は決然と話す。同工場は機械の稼働状況と現場の作業状況をインターネットでつないだ「生産支援システム」を導入した。タブレット端末があれば、花王の国内3工場および中国と台湾の工場の現状を把握できる。

システム構築に当たりトラブルが起きた際の対処方法も統一した。トラブルとその対処法をデータベースに蓄積。異常があって機械が止まると、タブレットに原因と思われる事柄とトラブル解決の手順が表示される。この手順に従えば、ベテラン社員でなくても対処できる。わかりにくい工程は動画で指示する。「機械の停止時間が38%減少し、稼働率が6・6%向上した。経験の浅い社員がベテラン社員の方法を実践するため、教育にもつながる」(河尻工場長)と効果を上げている。

【遠隔で支援】

花王では「遠隔作業支援システム」も導入している。各地の工場でトラブルが起きた場合や難しい保守・点検が必要となった場合に、作業者の頭にカメラをつけて手元を映す。この映像を栃木工場の社員が見ながら、的確な指示を出す。誰でも、どの工場でも同じ作業ができる仕組みの導入により、機械1台当たりに必要なオペレーターの数を減らす。優秀な人材の有効活用を目指している。

【人の知識入れる】

一方、ユニ・チャームの九州工場(福岡県苅田町)では、機械の異常を機械が判断できるようなシステムの構築に挑んでいる。日々の日報をAIに学習させ、トラブルが起きた際の対処方法と、何をもって問題とするかを統一する。「今でも異常があれば機械は止まるが、ここに人の知識を入れる。異常が起きる前の段階で機械がアラームを出すようにして、トラブルを予防する」(辻泰之ユニ・チャームプロダクツ九州工場工場長)。

【判断にバラつき】

従来、機械の異常は日常の点検で人が予知していた。振動の大きさや異音などで判断するため人によるバラつきがあり、ベテランでなければ察知できないこともあった。また同工場では入社年次の浅い社員も多い。的確な指示を出すのは重要だ。対処法を学習したAIが機械に直接指示を表示し、ベテラン社員でなくてもトラブルに対処できるようにする。今後、システムを完成させ次第、他の工場にも導入する予定だ。

機械で製造するようになっても動かすのは人だが、人材の確保に苦戦する現場は多い。教育の時間をかけずにベテランと同じ動きができる仕組みは各業種共通の解決策であり、広がりをみせそうだ。

日刊工業新聞2019年12月12日

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