生活必需品の物流を止めるな!日用品各社の緊急時対応の仕組み
警備各社も防災製品の開発強化
9月1日は防災の日―。7月に発生した西日本豪雨のように、いつどこで水害や地震などの自然災害が起こっても不思議ではない。日用品各社は緊急時に生活必需品の物流を止めない仕組みを構築。警備各社は水害対策サービスの展開や独自の防災製品の開発など、この分野の事業強化を図る。
西日本豪雨では広島県内で高速道路が通行止めになり、物流に大きな影響が出た。花王は入荷が遅れた愛媛工場からの出荷分を、大阪・堺の物流センターから北海道・石狩などに緊急供給。また愛媛県で橋が傾いた影響で貨物列車が運休したため、急きょ輸送ルートを変更。堺物流センター経由でトラックで材料を輸送した。
経営サポート部門RC推進部の上塩入伸之マネジャーは「日用品メーカーとして災害時に道路が寸断されても日頃使う商品を届けられるよう対応しなければいけない」と話す。花王は独自で物流会社を持つ強みを生かし、災害時、輸送ルートを柔軟に変えることで、欠品などを避ける体制を整えている。
また、東日本大震災の際、すぐに支援物資が送れなかった反省を生かし、支援要請に対応する窓口を一本化した。これにより支援の正式な要請を受けてから2日以内に支援物資を発送できる体制を整えた。
おむつや生理用品など、自治体の要請を待たずに送るプッシュ型支援に、即時に対応できるように事業部や生産・物流部門と各地域の物流センターが連携を図る。
ライオンは東日本大震災後、その教訓を生かし、事業継続計画(BCP)を強化している。災害直後でも製品出荷を継続し、店頭への商品供給を止めない仕組みを構築。サプライチェーンマネジメント(SCM)機能が停止しても補完できるように、有事に備えた体制づくりを進めている。
大地震など災害が起こった直後でも、迅速に行動できるように「SCM初動対応マニュアル」を作成。事業所などが震度6以上の被害を受けると、本部で組織を立ち上げる仕組みだ。社内の原材料調達部門や物流部門などをグループ分けし、震災発生初日・3日以内・1週間以内といった期間を設けて、「誰が・何をするのか」を行動フローとチェックリストにまとめている。
迅速に対応するため、「拠点見えるかシステム」と「在庫見えるかシステム」を独自開発。「拠点見えるかシステム」は電子地図上に工場や倉庫、配送拠点などをプロット表示し、地理上で被災地と拠点の位置関係が分かる。「在庫見えるかシステム」では配送拠点ごとに在庫と、何日分の販売額に相当するかの在庫日数をエクセル上でリアルタイムに管理。これらによって拠点と在庫の両面からSCMへの影響を把握している。
綜合警備保障(ALSOK)は4月から、茨城県常総市で小型水門の運用を受託。15年に堤防の決壊で大規模な水害が起きた鬼怒川流域では、上流で大雨が発生すると水位が上がり、支流の用水路が逆流する問題があった。小型の水門を指す樋管ゲートの定期点検や水位計の設置・運用のほか、河川が増水した際には樋管ゲートの開閉操作を担う。市の職員数も限られているため、樋管ゲートの開閉業務までには手が回らずALSOKが対応する。
樋管操作業務は水位計の設置もセットにすることで常総市へ提案を進め、受託にこぎ着けた。クラウドサービスを活用し、遠隔地から水位データを収集し、水位が一定の値を超えると、アラートメールを送信する仕組み。現場作業者の安全を確保するためにも水位計を活用し、樋管ゲート操作基準を明確化している。
ALSOKの樋管操作業務は引き合いが出始めたばかりだが、実際に被災した地域を中心に関心が高まっている。豪雨被害などが増え、水害対策への機運が高まる中、防災用品や関連サービスと連動して進める。
セコムは9月上旬に、地震や津波、土砂崩れ、洪水などの災害から命を守るシェルター「あんしん防災シェルター」を発売する。災害時も営業を続ける必要がある金融機関やプラント、工場や、災害発生のリスクが高い地域での活用が狙いだ。
光レジン工業(東京都日野市)と共同開発した繊維強化プラスチック(FRP)製で内部は密閉可能。完全防水で津波や洪水に襲われても水に浮く。30トン以上の荷重に耐えられるため地震などで建物が倒壊しても押しつぶされない。内部に5時間分の携帯酸素や照明を備えている。
救出に際してはGPSと携帯電話基地局を使った「ココセコム」により、位置情報を特定できる(オプションサービス)。電波透過性が高く、内部から携帯電話での救助を要請することもできる。
また、同社では大規模イベントの警備などで培ったノウハウを活かし、車両型の移動式モニタリング拠点「オンサイトセンター」を展開する。
(文=高島里沙)
日用品 物流・商品供給力を強固に
西日本豪雨では広島県内で高速道路が通行止めになり、物流に大きな影響が出た。花王は入荷が遅れた愛媛工場からの出荷分を、大阪・堺の物流センターから北海道・石狩などに緊急供給。また愛媛県で橋が傾いた影響で貨物列車が運休したため、急きょ輸送ルートを変更。堺物流センター経由でトラックで材料を輸送した。
経営サポート部門RC推進部の上塩入伸之マネジャーは「日用品メーカーとして災害時に道路が寸断されても日頃使う商品を届けられるよう対応しなければいけない」と話す。花王は独自で物流会社を持つ強みを生かし、災害時、輸送ルートを柔軟に変えることで、欠品などを避ける体制を整えている。
また、東日本大震災の際、すぐに支援物資が送れなかった反省を生かし、支援要請に対応する窓口を一本化した。これにより支援の正式な要請を受けてから2日以内に支援物資を発送できる体制を整えた。
おむつや生理用品など、自治体の要請を待たずに送るプッシュ型支援に、即時に対応できるように事業部や生産・物流部門と各地域の物流センターが連携を図る。
ライオンは東日本大震災後、その教訓を生かし、事業継続計画(BCP)を強化している。災害直後でも製品出荷を継続し、店頭への商品供給を止めない仕組みを構築。サプライチェーンマネジメント(SCM)機能が停止しても補完できるように、有事に備えた体制づくりを進めている。
大地震など災害が起こった直後でも、迅速に行動できるように「SCM初動対応マニュアル」を作成。事業所などが震度6以上の被害を受けると、本部で組織を立ち上げる仕組みだ。社内の原材料調達部門や物流部門などをグループ分けし、震災発生初日・3日以内・1週間以内といった期間を設けて、「誰が・何をするのか」を行動フローとチェックリストにまとめている。
迅速に対応するため、「拠点見えるかシステム」と「在庫見えるかシステム」を独自開発。「拠点見えるかシステム」は電子地図上に工場や倉庫、配送拠点などをプロット表示し、地理上で被災地と拠点の位置関係が分かる。「在庫見えるかシステム」では配送拠点ごとに在庫と、何日分の販売額に相当するかの在庫日数をエクセル上でリアルタイムに管理。これらによって拠点と在庫の両面からSCMへの影響を把握している。
警備 水害対策サービス拡充
綜合警備保障(ALSOK)は4月から、茨城県常総市で小型水門の運用を受託。15年に堤防の決壊で大規模な水害が起きた鬼怒川流域では、上流で大雨が発生すると水位が上がり、支流の用水路が逆流する問題があった。小型の水門を指す樋管ゲートの定期点検や水位計の設置・運用のほか、河川が増水した際には樋管ゲートの開閉操作を担う。市の職員数も限られているため、樋管ゲートの開閉業務までには手が回らずALSOKが対応する。
樋管操作業務は水位計の設置もセットにすることで常総市へ提案を進め、受託にこぎ着けた。クラウドサービスを活用し、遠隔地から水位データを収集し、水位が一定の値を超えると、アラートメールを送信する仕組み。現場作業者の安全を確保するためにも水位計を活用し、樋管ゲート操作基準を明確化している。
ALSOKの樋管操作業務は引き合いが出始めたばかりだが、実際に被災した地域を中心に関心が高まっている。豪雨被害などが増え、水害対策への機運が高まる中、防災用品や関連サービスと連動して進める。
セコムは9月上旬に、地震や津波、土砂崩れ、洪水などの災害から命を守るシェルター「あんしん防災シェルター」を発売する。災害時も営業を続ける必要がある金融機関やプラント、工場や、災害発生のリスクが高い地域での活用が狙いだ。
光レジン工業(東京都日野市)と共同開発した繊維強化プラスチック(FRP)製で内部は密閉可能。完全防水で津波や洪水に襲われても水に浮く。30トン以上の荷重に耐えられるため地震などで建物が倒壊しても押しつぶされない。内部に5時間分の携帯酸素や照明を備えている。
救出に際してはGPSと携帯電話基地局を使った「ココセコム」により、位置情報を特定できる(オプションサービス)。電波透過性が高く、内部から携帯電話での救助を要請することもできる。
また、同社では大規模イベントの警備などで培ったノウハウを活かし、車両型の移動式モニタリング拠点「オンサイトセンター」を展開する。
(文=高島里沙)
日刊工業新聞2018年8月31日