神奈川県が「未病産業」に力を入れている!割引もスタート
交付金活用、普及促し新産業育成
「未病産業」創出へ一歩−神奈川県が研究会
神奈川県は病気に至る手前の「未病」に関連した産業の創出に力を入れている。2014年8月に民間企業、病院、大学などによる「未病産業研究会」を立ち上げ、勉強会やモデル事業の認定を通じ、産業化を目指している。同時に「ME―BYO」を商標登録し、概念の普及啓発にもつなげていく意向だ。研究会に属する個々の民間企業でも「未病」に取り組み産業へつなげる活動を始めている。
県の「未病産業研究会」には15年1月1日現在、125団体が参画している。大企業、中小企業、ベンチャーなど規模や業界を問わず多種多様な企業や団体が名を連ねる。14年8月の設立総会では64団体でスタート。約4カ月で2倍に増加した。同会は15年1月までに全3回の活動を実施。1回目の設立総会を皮切りに、2回目は地域ヘルスケアファンドや知財の専門家を呼び、勉強会を開催。3回目は会員会社が自社の取り組みを紹介し、企業同士のマッチングを図った。
神奈川県ヘルスケア・ニューフロンティア推進局未病産業・ヘルスケアICT担当の兄内宏課長は、「健康そのものや完全に死亡している以外はすべての人が未病の範囲に入る」としている。県は「議会での知事の答弁をみると、一つでも多くのモデル事業に成功し、事業が自走化し一つのビジネスモデルとして成功することが産業化につながる」(兄内課長)と説明する。14年11月にはモデル事業16件を採択し、そのうち15件が動きだした。
イオンは神奈川県内で、エクササイズやウオーキングを企画、イオンの電子マネー「WAON」を活用しながら、店舗内を歩くことで健康維持につなげがる取り組みを仕掛けている。イオンコーポレートコミュニケーション部では「未病を治す活動を行うことで社会貢献だけでなく、小売りの販売にもつなげたい」と話す。
イオンは神奈川県の「未病産業の創出に係わるモデル事業」に採択され、「じぶんからだチェック&健康ウォーク」に取り組む。イオン相模原店、マックスバリュ小田原荻窪店では3月5日までの間、店内の設置された機械に「WAON」をタッチすることで「健康ポイント」がたまる。健康ポイントはWAONポイントにも交換できるという。
碧山園(神奈川県愛川町、安間智慧子社長、046・210・0031)は、杜仲茶の製造・開発を手がけるベンチャー企業だ。同社も未病研究会の一員。安間社長は「動脈硬化やメタボリック、血糖値などで効果が期待できる」と話し、今後は医学的な裏付けを取る構えだ。
現在はインターネットとデパートでの販売が中心だが、同研究会を活用して「将来的にはいろいろな会社とのマッチングを通じ新しい商品を作りたい。現在は県から委託を受けたコンサルタントと話を進めている段階」(同)と語る。
神奈川県では「ME―BYO」の商標登録を14年6月に取得。許諾制度を11月に発足し、概念の普及というカテゴリーから「商品・サービスの認証」へと範囲を拡大する。企業の利用を募り、普及につなげる方針だ。
(文=横浜・川口拓洋)
日刊工業新聞2015年09月11日 中小企業・地域経済面/2015年01月21日 列島ネット面