買い物の高齢者送迎、全国初の自家用有償旅客運送が始まった
グリーンスローモビリティ(グリスロ)を利用した全国で初めての自家用有償旅客運送による高齢者送迎事業が3日、東京都町田市の鶴川団地で始まった。モビリティワークス(町田市、西利也社長)がコーディネートし、社会福祉法人の悠々会(同、陶山慎治理事長)が運用主体となる。行政の助成金などに頼らず、高齢者の買い物支援のために地域とボランティアが人と資金を広く薄く負担し、持続可能な事業スキームとした。
走行するグリスロはゴルフカート型の4人乗り2台。電気駆動で時速20キロメートル未満で公道を走行する。悠々会は地域公益事業と位置付け、一般乗用旅客自動車運送と自家用自動車有償運送の許可を取得、ドライバーは二種免許が要らない福祉有償運転者講習を受けた地域のボランティア数人が登録し、空いている人が対応する。
利用できるのは地域のボランティア団体「鶴川団地地域支え合い連絡会」の会員となっている要支援相当の人。年間登録料に500円かかるが、他の費用負担はない。運行エリアは鶴川2、5、6丁目団地で、自宅と鶴川団地センター名店街の行きたいところまで送迎する。原則として火・金曜の運行で前日予約が必要だが、「ドライバーの都合がつけば他の曜日でも利用できるよう弾力的に運用する」(陶山理事長)。
事業のきっかけは2年前、西氏が経営する地域のIT会社、ZipSystemに、鶴川団地から地域を盛り上げたいと相談があったこと。ただ、ITシステムやイベントよりも高齢者の買い物や外出支援が最も期待されていることがわかり、西氏は2018年12月にモビリティワークスを設立した。
車両は同社が輸入し悠々会にリースする。駐車場は鶴川団地を開発した都市再生機構(UR)が無償提供、電気代は商店街が負担し、地域の企業やクリニックから広く寄付を募りボランティアが運営する。モビリティワークスは全地球測位システム(GPS)を使い車両が指定エリアを外れると時速が4キロメートルに下がり危険回避の機能を持つ運行管理システムを開発、導入した。「助成金に頼ると多くの場合、期間が過ぎれば事業も終わってしまう。工夫しながら継続させるのが目標」(西氏)という。
グリスロは高齢者や障害者、観光客などの身近な交通手段として期待されており、今年4月には広島県福山市でタクシー事業が始まっている。