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パソコン一斉シャットダウンで残業削減、大阪府の“強制手段”は奏功するか

2020年度から実施

大阪府は働き方改革の一環で、2020年度から管理職などを除く職員全員の「パソコン一斉シャットダウン」を実施する。RPA(ソフトウエアロボットによる自動化)の試験導入や管理職の意識改革など、16年度からの取り組みで残業時間は減少傾向にあったものの、度重なる災害対応などで18年度は時間外勤務が増加。今後のビッグイベント準備にかかる作業量増加をにらみ、根本的な業務改善を図る。(取材=大阪・大川藍)

「(18年の)トータル時間外勤務時間は増えており、19年上期はここ5年で一番多い」。大阪府の吉村洋文知事は危機感を募らせる。16年から2度にわたり実施してきた働き方改革で、時間外勤務実績は16年度以降年2―4%の割合で減少したが、18年度は一転して前年比3%増となった。

20カ国・地域首脳会議(G20)大阪サミットなどの国際イベント準備に加え、台風21号などの自然災害対応で業務量が大幅に増えたためだ。

吉村知事は「本格的に時間外労働を減らす仕組みが必要だ」として、全館一斉シャットダウンの検討に乗り出した。導入されれば、勤務時間の延長を事前に申請しない場合、終業時刻から30分後に強制的にパソコンの電源が落ちる。同様の仕組みは寝屋川市で導入実績があり、約3%の業務時間削減を見込む。「(延長申請)ボタンを押すことは一つ壁を乗り越えることになり、そこで1日を振り返ることができる」(吉村知事)とみる。

25年の大阪・関西万博やカジノを含む統合型リゾート(IR)の開業準備に加え、大阪都構想の実現に向けた住民投票の実施などで職員の業務負担は今後ますます増えると見込まれる。府は一斉シャットダウンという都道府県初の“強制手段”で、苦しい状況の打開を図りたい考えだ。

日刊工業新聞2019年12月5日

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