JR九州「香椎線」で自動運転導入へ
まず運転士乗車型
JR九州は2020年春にも、福岡市東区の香椎(かしい)線・西戸崎―香椎駅間で、自動列車運転装置(ATO)機能の運用を開始する。運転士が各駅出発時に安全を確認して出発ボタンを押す半自動運転。JRグループで自社線にATOを導入するのは初。数年内に動力車操縦者免許(運転士資格)を持たない添乗員が乗務して緊急対応する自動運転の実現につなげる。地方線区の生産性を改善し、持続可能な鉄道を目指す。
R九州の自動運転は、運転士が操作を誤った時に自動で列車を止める自動列車停止装置(ATS)「ATS―DK」がベース。ATS車上装置に自動運転用の演算システムを付加した。東京メトロや福岡市交通局らが採用する、自動列車制御装置(ATC)ベースのATOとは異なる。
ATCが連続信号に合わせて自動で減速するのに対し、ATSはあくまで各地点で運転士を支援する装置。ATS―DKは許容速度以下にあることを常時計測する連続速度照射式を採用しており、仮想的にATCのような連続制御が可能だとしてATOを実現する。
発車後はATS制限速度を元にした目標速度に応じて自動で加減速。駅構内に定位置停止装置(TASC)の地上子を設置済みで、決められた停止・減速パターンに沿って自動でブレーキ制御する。
香椎線は先行するATO導入路線とは異なり、踏切があって駅ホームドアも未整備。現在、第三者委員会を設けて安全性を確認している。年明けまで試験走行を重ね、2月には稼働に向けた習熟運転に移行する予定だ。
JR九州が目指す、添乗員が車両前頭に座る自動運転は、省令の改正や技術面で課題がある。運転士乗車型の自動運転を足がかりにしたい考え。
J研究会を通じて、国土交通省に省令改正を働きかけていくとともに、20年以降、前方監視カメラの検討にも取り組む。
日刊工業新聞2019年11月29日