新型アイフォーンの初期生産台数は過去最高。「日本部品」存在感高まる
「当面、世界規模でアップルの地位は揺るがない」(IHSグローバルの早瀬アナリスト)
米アップルが今月発売する「iPhone(アイフォーン)6s/6sプラス」の初期生産台数は、業界関係者によると過去最高の9000万台に上る。アイフォーン5が失速し快進撃に陰りが見えた2013年の「アップルショック」は今や昔話。その後、中国市場での成功を経て、アップルのスマホ業界でのリーダーとしての地位はより強固になった。6s/6sプラスに搭載した新技術には、日本メーカーの部品が採用された。勢いを増す”アップル経済圏“の中で日本メーカーの存在感も高まっている。
「最近、スマホで写真を撮る機会が減った」―。中国蘇州市の電機メーカーに勤める張圓圓さん(チャン・ユアンユアン、仮名)は打ち明ける。理由はスマホをアイフォーンから中国メーカー製に買い替えたこと。「写真のきれいさが全然違う。今の中国スマホでは撮りたいというモチベーションが上がらなくて」と話す。
14年秋に投入した「アイフォーン6/6プラス」で中国市場に本格参入したアップル。その販売は好調で、15年4―6月期の中国事業(香港、台湾を含む)売上高は前年同期比2・1倍の132億3000万ドルとなり、アップル全体の成長をけん引した。「中国メーカーにもがんばってほしいけれど、現状ではアップルは別格」と張さんは指摘する。
12年秋に発売したアイフォーン5は、13年に入り販売が急減した。業界を「アップルショック」が襲い、サプライヤーである日本の部品メーカーの業績を直撃した。スマホの主戦場が先進国から新興国にシフトし、低価格モデルが台頭する中、”アップル冬の時代“の到来を予測する声は多かった。
しかし中国での成功は、改めてアイフォーンの強さを浮き彫りにした。「当面、世界規模でアップルの地位は揺るがない」とIHSグローバルの早瀬宏シニアディレクター上席アナリストはみる。
部品メーカー、“脱アップルのかけ声少なく
アップルへの過度の依存から脱しよう―。アップルショック後、日本の部品メーカーで叫ばれた大号令は影を潜めた。
もちろんいまだに顧客分散は重要な経営テーマに違いない。ただ、それはアップル軽視にはつながらず、各社は関係強化に動いている。液晶パネルを供給するジャパンディスプレイ(JDI)はアップルから資金供給を受け、16年春に石川県白山市に工場を新設し受注増に応える。
目下、6s/6sプラス向けの部品受注も好調だ。部品大手4社の15年4―6月期は全社が増収増益。中国経済の減速を尻目に、足元の受注も総じて好調で「受注が落ち込むといったことはなく、当初計画通り部品供給を進めている」(部品メーカー首脳)。
アイフォーンは、スマホ技術を先導する「トレンドセッター」としての役割も増している。3次元(3D)カメラなど中国スマホも先端技術を積極的に取り入れているが、消費者に受け入れられているとは言いがたく、「結局のところアイフォーンの技術を後追いせざるを得ない」(大手部品メーカー担当者)。
6s/6sプラスは、指でタッチパネルに触れる際の力の強弱で異なる操作を行える新技術「3Dタッチ」が売りものの一つ。この3Dタッチを使った際、パネルから反応を返す技術の実現に日本電産の超小型モーターが採用されたようだ。日本の部品メーカーは増産対応、技術開発面でもアップルとの連携を深めており、別の部品メーカーの担当者は「アップルからの要求に応えられるよう、新技術を用意し続けなければならない」と話す。
勢いを増すアイフォーン。しかし懸念もある。消費者に対して訴求力の高い画面サイズの大型化やカメラ機能は性能限界が近づいており、アイフォーンのハードウエア面での魅力アップの余地は狭くなっている。進化がストップすれば、新興メーカーに追いつかれるリスクは高まる。
アップルは4月にカメラ技術開発のリンクス・コンピュテーショナル・イメージング(イスラエル)を買収するなどベンチャーの技術を貪欲に取り込んでいる。「想像を超えるような『あっ』と驚くことをやってのけるのがアップル」と中核部品を供給する日本メーカーの担当者は強調する。
今後もハード面で想像を超える新機能を打ち出し続けることができるか、それともソフトウエアなど別の分野の進化に比重を移すか―。日本の部品メーカーはアップルの戦略を注視している。
「最近、スマホで写真を撮る機会が減った」―。中国蘇州市の電機メーカーに勤める張圓圓さん(チャン・ユアンユアン、仮名)は打ち明ける。理由はスマホをアイフォーンから中国メーカー製に買い替えたこと。「写真のきれいさが全然違う。今の中国スマホでは撮りたいというモチベーションが上がらなくて」と話す。
14年秋に投入した「アイフォーン6/6プラス」で中国市場に本格参入したアップル。その販売は好調で、15年4―6月期の中国事業(香港、台湾を含む)売上高は前年同期比2・1倍の132億3000万ドルとなり、アップル全体の成長をけん引した。「中国メーカーにもがんばってほしいけれど、現状ではアップルは別格」と張さんは指摘する。
12年秋に発売したアイフォーン5は、13年に入り販売が急減した。業界を「アップルショック」が襲い、サプライヤーである日本の部品メーカーの業績を直撃した。スマホの主戦場が先進国から新興国にシフトし、低価格モデルが台頭する中、”アップル冬の時代“の到来を予測する声は多かった。
しかし中国での成功は、改めてアイフォーンの強さを浮き彫りにした。「当面、世界規模でアップルの地位は揺るがない」とIHSグローバルの早瀬宏シニアディレクター上席アナリストはみる。
部品メーカー、“脱アップルのかけ声少なく
アップルへの過度の依存から脱しよう―。アップルショック後、日本の部品メーカーで叫ばれた大号令は影を潜めた。
もちろんいまだに顧客分散は重要な経営テーマに違いない。ただ、それはアップル軽視にはつながらず、各社は関係強化に動いている。液晶パネルを供給するジャパンディスプレイ(JDI)はアップルから資金供給を受け、16年春に石川県白山市に工場を新設し受注増に応える。
目下、6s/6sプラス向けの部品受注も好調だ。部品大手4社の15年4―6月期は全社が増収増益。中国経済の減速を尻目に、足元の受注も総じて好調で「受注が落ち込むといったことはなく、当初計画通り部品供給を進めている」(部品メーカー首脳)。
アイフォーンは、スマホ技術を先導する「トレンドセッター」としての役割も増している。3次元(3D)カメラなど中国スマホも先端技術を積極的に取り入れているが、消費者に受け入れられているとは言いがたく、「結局のところアイフォーンの技術を後追いせざるを得ない」(大手部品メーカー担当者)。
6s/6sプラスは、指でタッチパネルに触れる際の力の強弱で異なる操作を行える新技術「3Dタッチ」が売りものの一つ。この3Dタッチを使った際、パネルから反応を返す技術の実現に日本電産の超小型モーターが採用されたようだ。日本の部品メーカーは増産対応、技術開発面でもアップルとの連携を深めており、別の部品メーカーの担当者は「アップルからの要求に応えられるよう、新技術を用意し続けなければならない」と話す。
勢いを増すアイフォーン。しかし懸念もある。消費者に対して訴求力の高い画面サイズの大型化やカメラ機能は性能限界が近づいており、アイフォーンのハードウエア面での魅力アップの余地は狭くなっている。進化がストップすれば、新興メーカーに追いつかれるリスクは高まる。
アップルは4月にカメラ技術開発のリンクス・コンピュテーショナル・イメージング(イスラエル)を買収するなどベンチャーの技術を貪欲に取り込んでいる。「想像を超えるような『あっ』と驚くことをやってのけるのがアップル」と中核部品を供給する日本メーカーの担当者は強調する。
今後もハード面で想像を超える新機能を打ち出し続けることができるか、それともソフトウエアなど別の分野の進化に比重を移すか―。日本の部品メーカーはアップルの戦略を注視している。
日刊工業新聞2015年09月11日 電機・電子部品・情報・通信面