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中年ニート「社会進出のラストチャンス」、政府の支援は結実するか

長期無業や引きこもりの人が約50万人、人手不足で一歩前へ

政府は、厳しい雇用環境下で希望の職に就けなかった30代半ばから40代半ばにかけての「就職氷河期世代」への支援を進めている。自治体や経済団体などと連携しつつ、就労相談や教育訓練などをアピール。ツイッターの公式アカウントを開設し、当事者にも働きかける。2020年度予算の概算要求には、前年度当初予算比28%増の1344億円を盛り込んだ。人手不足で「最大のチャンス」といわれる中、当人には一歩前進の契機となるのか。

政府は少子高齢化による社会保障費の膨張を背景に、経済財政運営と改革の基本方針「骨太の方針」で氷河期世代の正規雇用を3年間で30万人増やすとした。所得向上、内需拡大につなげ、社会保障の担い手を広げる。

バブル経済の崩壊後やIT不況期に高校や大学を卒業した同世代には、非正規労働者約50万人のほか、長期無業や引きこもりの人が約50万人いるとされる。

「本人の立場になって、できる限り手を差し伸べたい」―。10月下旬、東京・巣鴨の二つの引きこもり支援組織を訪問した西村康稔全世代型社会保障改革担当相はこう述べた。

人間関係や意思疎通などに起因するとされる引きこもりについて、KHJ全国ひきこもり家族会連合会の池上正樹理事は「就労目的だけの支援ではなじまない」と訴え、楽の会リーラの市川乙允事務局長は相談員の大幅増に向けた支援を国に求めた。

内閣官房に「就職氷河期世代支援推進室」が設置されて3カ月。9府省の担当者約30人で構成し、地域ごとの支援策の普及・啓発の統括などが任務だ。対象者とその家族、雇用主の企業・団体、支援者、有識者と情報交換が行える場づくりを進めており、すでに愛知県や大阪府などで立ち上がった。

氷河期支援と称し政府は19年度に1000億円超の予算を付けた。同世代の失業者らを正社員として雇い入れた企業への「特定求職者雇用開発助成金」「トライアル雇用助成金」などの施策を擁し、20年度には拡充する。確かに予算は必要だが、相談員や支援員ら人的資源の確保・教育には担当者の根気強さが大切になる。

ある担当官は「人手が足りない今が、就職・社会進出のラストチャンス」と強調する。80代の親が50代の子どもを養わざるを得ない家庭が20年代後半にかけて急増する「8050問題」がいわれる中、「50歳までに自立の機会につなげたい」(担当官)という。

06年からの第1次安倍政権では「再チャレンジ」の名の下、ニートやフリーター対策を講じた。その成功と失敗の事例も検証しつつ、意識の高い関係者間はせめて情報のすれ違い、施策のミスマッチを避けたいところだ。
(取材・山中久仁昭)

日刊工業新聞2019年11月7日

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