トヨタのWRC快進撃支える、エンジン開発の秘密
工作機械メーカーと信頼関係築く
トヨタ自動車は、2018年度にFIA世界ラリー選手権(WRC)参戦2年目で王座を獲得する快挙を遂げた。19年WRCはトヨタのオット・タナック選手が同年の総合優勝を飾った。参戦車両「ヤリスWRC」の心臓部であるエンジンを開発、製造するのが、独ケルンにあるトヨタ・モータースポーツ(TMG)だ。
世界最高峰のモータースポーツのエンジン開発は「設計、計算、実験のループを高速でぐるぐると回す」(青木徳生WRCエンジン・プロジェクト・マネージャー)と、スピードが最重要要件の一つだ。エンジン部品を削る工作機械にはこの要件に応えられる効率の良さが求められる。WRCでは1台当たり3基のエンジンが用意される。エンジンの性能に個体差は許されず、「そのためにも精度が大事」とファルク・シュルコフスキTMGエンジンデザインマネージャーは熱く語る。
工場よりむしろ研究所といった雰囲気の製造部門には、DMG森精機の工作機械がずらりと並ぶ。特別仕様のマシニングセンター(MC)、棒材加工のターニングセンターなど同社製品を中心とした機械設備であり、「試作機」(同)と言うガントリー型MCは超音波加工用の主軸を搭載し、アルミ部品を加工していた。同ガントリー正面には独ジマーマンのガントリーもあり、ルマン参戦車両用に炭素繊維強化プラスチック(CFRP)製車体の型を製造している。CFRP成形も社内で行う。
工場メーンエリアでのシリンダーヘッドの加工には、やはりDMG森精機のMC「DMU125U」が稼働していた。燃料効率を高めるための独自の長尺加工を、同MCで10時間短縮したという。ちなみにTMGの基幹CAD/CAM(コンピューター利用設計・製造)は「CATIA」、金型CAMは「TEBIS」と、当然だが機械設備同様に最先端をそろえる。
それでも大切なのは人間同士の信頼関係だそうだ。02―09年のF1参戦時は「図面が終わる前に製造指示がきた。互いの信頼があってこそできた」(シュルコフスキマネージャー)という。
F1から撤退してちょうど10年がたつが、信頼の文化は薄れておらず、TMGの財産だ。設備力、加工技術、そして信頼が極限を攻める4輪を駆動させている。
(取材・六笠友和)
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工作機械の市況低迷も、DMG森精機が強気の国内生産増強に動くワケ
世界最高峰のモータースポーツのエンジン開発は「設計、計算、実験のループを高速でぐるぐると回す」(青木徳生WRCエンジン・プロジェクト・マネージャー)と、スピードが最重要要件の一つだ。エンジン部品を削る工作機械にはこの要件に応えられる効率の良さが求められる。WRCでは1台当たり3基のエンジンが用意される。エンジンの性能に個体差は許されず、「そのためにも精度が大事」とファルク・シュルコフスキTMGエンジンデザインマネージャーは熱く語る。
工場よりむしろ研究所といった雰囲気の製造部門には、DMG森精機の工作機械がずらりと並ぶ。特別仕様のマシニングセンター(MC)、棒材加工のターニングセンターなど同社製品を中心とした機械設備であり、「試作機」(同)と言うガントリー型MCは超音波加工用の主軸を搭載し、アルミ部品を加工していた。同ガントリー正面には独ジマーマンのガントリーもあり、ルマン参戦車両用に炭素繊維強化プラスチック(CFRP)製車体の型を製造している。CFRP成形も社内で行う。
工場メーンエリアでのシリンダーヘッドの加工には、やはりDMG森精機のMC「DMU125U」が稼働していた。燃料効率を高めるための独自の長尺加工を、同MCで10時間短縮したという。ちなみにTMGの基幹CAD/CAM(コンピューター利用設計・製造)は「CATIA」、金型CAMは「TEBIS」と、当然だが機械設備同様に最先端をそろえる。
それでも大切なのは人間同士の信頼関係だそうだ。02―09年のF1参戦時は「図面が終わる前に製造指示がきた。互いの信頼があってこそできた」(シュルコフスキマネージャー)という。
F1から撤退してちょうど10年がたつが、信頼の文化は薄れておらず、TMGの財産だ。設備力、加工技術、そして信頼が極限を攻める4輪を駆動させている。
(取材・六笠友和)
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