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浸透するグリーンボンド、新表彰制度でさらに後押しなるか

発行件数が最高 国内2年連続5000億円超
浸透するグリーンボンド、新表彰制度でさらに後押しなるか

ESGファイナンス・アワード創設を発表する小泉進次郎環境相

 環境事業に資金を使うことを目的とした債券「グリーンボンド(環境債)」の2019年の国内発行が9月末時点で37件となり、前年の34件を超えたことが環境省の集計で分かった。また9月末時点の発行総額は5083億円となっており、2年連続で5000億円を突破した。ESG(環境・社会・企業統治)投資が潮流となり、海外に比べて遅れていた日本市場にもグリーンボンドが浸透してきた。

 グリーンボンドは環境問題を解決する資金を民間から調達する手法として発達した。発行した自治体や企業は、省エネルギー設備への更新や再生可能エネルギー事業に必要な資金を調達できる。ESG投資の“E(環境)”として認知され、生命保険などの機関投資家がグリーンボンドを購入している。

 19年は小田急電鉄が省エネ型車両への更新費、明電舎が電気自動車用部品の量産設備費、カネカが海洋で分解されるプラスチックの製造や研究開発資金の調達を目的として発行するなどし、国内企業による発行が37件に達した。

 19年の発行総額は18年実績(5363億円)まで280億円と迫る。10月にはリコーリースが、小水力発電設備などの購入資金の借り換えに充てる資金調達を目的に100億円のグリーンボンドを発行する。残り3カ月あり、総額でも前年を超え過去最高となる可能性がある。

 日本では14年、国内企業初となるグリーンボンドを日本政策投資銀行が発行した。15年は三井住友銀行が続いたが2件どまり。16年も4件だった。17年は東京都が自治体で初めて発行して話題となり、11件に拡大した。18年は三菱地所、商船三井、住友林業など事業会社が発行して34件に急増。総額も前年の2・4倍に膨らんだ。

                    

 世界の18年の発行総額は1685億ドル(18兆円)。欧州と北米に続き、アジア太平洋でも急速に広がっている。日本では環境省が費用の一部を補助したり、モデル事業を募集したりして発行を支援している。

 温室効果ガス排出の実質ゼロを目指す国際ルール「パリ協定」が20年にスタートすることもあり、さらに発行が増えそうだ。

優秀な取り組みに環境大臣賞


 環境省は、環境分野に貢献する優れた資金活用を表彰する「ESGファイナンス・アワード」を創設した。ESG(環境・社会・企業統治)投資をはじめとする環境金融の普及を後押しする狙い。投資家、融資、金融サービス、ボンド、環境サステナブル企業の五つの表彰部門を設け、募集を始めた。優秀な取り組みには環境大臣賞を贈る。

 応募締め切りは環境サステナブル企業部門が28日、ほかの部門は11月29日。2020年2月26日に都内で表彰式を予定している。

 温室効果ガス排出の実質ゼロを目指す国際ルール「パリ協定」が20年にスタートする。達成には大規模な資金投入が必要となっており、民間資金を環境分野に呼び込むESG投資やグリーンボンドの金融手法が広がっている。

 同アワードの事務局は、環境サステナブル企業部門が三菱UFJリサーチ&コンサルティング(03・6733・1107)、その他の部門は野村総合研究所(03・5877・7370)。
日刊工業新聞2019年10月7日
松木喬
松木喬 Matsuki Takashi 編集局第二産業部 編集委員
グリーンボンド発行企業は、着実に技術開発に取り組む企業が多いと感じています。カネカ(海で分解可能なプラ)、戸田建設(洋上風力)、大建工業(森林資源由来の素材の製造工場)など。そうした企業がESGファイナンス・アワードも受賞してほしいです。

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