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日立は“鉄道乱世”の覇者になれるか

英に新工場「日本流モノづくり×IT」で群雄割拠の時代をどう戦う?
日立は“鉄道乱世”の覇者になれるか

日立製作所のIEP向け車両


伊社買収で鉄道事業は4000億円に


 日立製作所は3日、英国ダーラム州で鉄道車両工場(写真)の開所式を開いたと発表した。日立が海外に鉄道車両工場を開設するのは初めて。都市間高速鉄道計画(IEP)向けに高速車両122編成(866両)を総額1兆円で受注しており、新工場で110編成分を製造する。総投資額は8200万ポンド(約151億円)。
 
 中西宏明会長兼最高経営責任者(CEO)は現地を訪れ「日本と英国の高品質で優れた製造技術を組み合わせ、その競争力を生かして最先端の鉄道車両を世界に提供する」とコメントした。

 新工場は英国の北東に位置するダーラム州ニュートン・エイクリフに建設した。工場の床面積は4万3000平方メートル。IEP向け高速車両「クラス800シリーズ」は2016年中に生産を開始し、19年に納入を終える。またスコットランド向け近郊車両「AT―200」も生産し、18年末までに納める。

 現地では今後3年で製造・保守要員を約1400人増やし1700人体制に拡充する。欧州で鉄道事業が拡大することから、体制を整えて納入の遅延などリスクを防ぐ。

 また開所式に先立ち、日立は鉄道システム事業を含む欧州戦略を公表した。同事業は、年内にイタリアの同業の買収を終えると売上高約4000億円に膨らむ。今後は英国の新幹線計画や地下鉄車両の更新計画の受注を狙う。また欧州本土でも買収先の販路や工場を活用し、受注を積み上げる。これにより将来は同事業で売上高1兆円を目指す。
日刊工業新聞2015年09月04日3面/ 電機・電子部品・情報・通信面
永里善彦
永里善彦 Nagasato Yoshihiko
ヨーロッパは大都市が乱立し、相互に行き来するには、航空機利用では近すぎる。 そこで日立は内需の期待できない日本から、鉄道事業部門のヘッド・クオーターを鉄道発祥の地英国に移し、海外で初の鉄道車両工場を開設する。英国では、単に鉄道車両を製造、納入するハード面だけでなく、ICTを駆使して車両と保守サービスを一体的に運営するシステムを提供する。 つまりメンテナンス・サービスを引受けることで安定収入を図る。 日立は鉄道事業を成長させるため世界を視野に、例えばシンガポールでは、ハードの車両提供にプラスして、「運行サービス」を行うソフト面まで提供し、万一、アクシデントで鉄道が止まった場合のバス等の代替輸送サービス案までも提示する。 まさしく鉄道など日立のいう「社会イノベーション事業」は、ICTを駆使してソフトからハードまでのシステムを提供し飛躍を図る。

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