EVとカーシェア、抱き合わせのビジネスモデルが加速する
親和性高く、エネルギー管理からラストワンマイルまで
電気自動車(EV)のカーシェアリングサービスが拡大している。自動車関連メーカーやカーシェアリング事業者は、EVとシェアの特性を生かしたビジネスモデルの構築に乗り出した。各社が持つEVやシェアサービスの普及を後押ししつつ、新たな移動体験を提供することが狙いだ。これにより、人々の移動における空白地点“ラストワンマイル”を埋める可能性などが期待される。
カーシェアリングサービスを手がけるパーク24(東京都品川区)は2020年1月までに日産自動車のEV「リーフ」を100台導入する。これまで4台のEVを導入し、自動車メーカーや自治体との実証実験に留まっていた。しかし、これまでに把握した課題の解消やEVシェアの運用体制が構築できると判断し、本格導入に踏み切った。
電池残量に応じた貸出時間が確認でき、短距離利用など用途に応じて借りられるようにした。これにより常にフル充電にしておく必要がなくなり、充電時間の課題を克服した。
またガソリン車は稼働率の低さが指摘されているが、EVは乗車していない時間を充電に充てられる点もメリットとして捉えた。加えて、環境に配慮した法人利用が増えている。既存のガソリン車をEVへ変更するのはコストがかかるため、「代替の一部をEVカーシェアで代用する需要がある」(パーク24)と商機を捉える。
EVのシェアにより、きめ細かい需要に応える動きもある。トヨタ自動車や愛知県豊田市などはトヨタ車体製の1人乗り小型EV「コムス」を活用したシェアリングサービス「ハーモライド」の実証実験を9月に始める。
目的地の最寄り駅までは電車、駅から目的地まではカーシェアリングを使う移動方法「レール&カーシェア」により、将来は小型EVの短距離利用が増えると見込む。100台以上のコムスを使い、走行データを基に安全運転の度合いを評価する。
すでに沖縄県・久米島では、豊田通商などを通じコムスを展開している。旅行や観光の際にレンタカーが用いられてきたが、島内などの移動範囲が狭い場合はコムスが好まれる可能性がある。観光客の新しい移動手段として提案している。
出光興産も8月から岐阜県高山市と同飛騨市で小型EVを使ったカーシェアリングの実証を始めた。タジマモーターコーポレーション(東京都中野区)が生産する競技用の2人乗り小型EVを活用。「小型EVは航続距離は短いものの、観光利用などにおいて細かい移動に適している」(広報)とみている。今後、需要や採算性を精査し、将来は事業化も検討する。
各社がEVとシェアを組み合わせたサービスを提供する背景には互いの相性の良さがある。ナカニシ自動車産業リサーチの中西孝樹代表は「車とエネルギーは切っても切り離せない関係にあり、EVのシェアは車両や電力の管理が容易になる。双方を紐づけることで、他の手段を含め循環型の移動社会を構築できる可能性がある」と分析する。
例えば、日本では中長距離移動には既存の移動手段が適しているものの、短時間・短距離移動などラストワンマイルを埋めるための利用にEVの活用が期待される。さらに、その実現に向けてエネルギーの管理体制を整備できれば効率的な運用のほか、災害時にEVの電源利用や電力のシェアなどにも応用できる。
一方で、EVとシェア共にまだ完全に普及したとは言えない。「空間」や「モノ」などのシェアリングエコノミー(共有型経済)に関するPwCコンサルティング(東京都千代田区)の調査では、「移動」が認知度のトップであるものの、その利用は大きく落ち込む。利用者に「活用したい」と思わせる意欲刺激がまだ弱く、EVについては航続距離などへの懸念がある。
さらにEVの普及について、ゴールドマン・サックス証券の湯沢康太マネージング・ディレクターは「本格普及には電池コストなどの課題があり、一足飛びにEV化が訪れるとは見ていない」と指摘。日本政府の電動化シナリオはハイブリッド車(HV)を組み合わせた日系自動車メーカーの想定に近く、欧州や中国などと比べてもEV化は緩やかだ。
ただEVとシェアを組み合わせることで、それぞれの課題をクリアし事業性を上げる可能性が出てきた。効率的な車両運用が求められるシェアにとって、短時間・短距離での利用に適したEVは扱いやすい。価格を課題とするEVにとっても、シェアで幅広い使われ方が促進されればコストを吸収できる。
トヨタの寺師茂樹副社長は「EV事業はシェアなど新たなビジネスによって事業化の展望が見えてきた」と語る。EVとシェアを単体で提供するのではなく、抱き合わせのビジネスモデルで勝負する時代が到来している。
カーシェアリングサービスを手がけるパーク24(東京都品川区)は2020年1月までに日産自動車のEV「リーフ」を100台導入する。これまで4台のEVを導入し、自動車メーカーや自治体との実証実験に留まっていた。しかし、これまでに把握した課題の解消やEVシェアの運用体制が構築できると判断し、本格導入に踏み切った。
電池残量に応じた貸出時間が確認でき、短距離利用など用途に応じて借りられるようにした。これにより常にフル充電にしておく必要がなくなり、充電時間の課題を克服した。
またガソリン車は稼働率の低さが指摘されているが、EVは乗車していない時間を充電に充てられる点もメリットとして捉えた。加えて、環境に配慮した法人利用が増えている。既存のガソリン車をEVへ変更するのはコストがかかるため、「代替の一部をEVカーシェアで代用する需要がある」(パーク24)と商機を捉える。
EVのシェアにより、きめ細かい需要に応える動きもある。トヨタ自動車や愛知県豊田市などはトヨタ車体製の1人乗り小型EV「コムス」を活用したシェアリングサービス「ハーモライド」の実証実験を9月に始める。
目的地の最寄り駅までは電車、駅から目的地まではカーシェアリングを使う移動方法「レール&カーシェア」により、将来は小型EVの短距離利用が増えると見込む。100台以上のコムスを使い、走行データを基に安全運転の度合いを評価する。
すでに沖縄県・久米島では、豊田通商などを通じコムスを展開している。旅行や観光の際にレンタカーが用いられてきたが、島内などの移動範囲が狭い場合はコムスが好まれる可能性がある。観光客の新しい移動手段として提案している。
出光興産も8月から岐阜県高山市と同飛騨市で小型EVを使ったカーシェアリングの実証を始めた。タジマモーターコーポレーション(東京都中野区)が生産する競技用の2人乗り小型EVを活用。「小型EVは航続距離は短いものの、観光利用などにおいて細かい移動に適している」(広報)とみている。今後、需要や採算性を精査し、将来は事業化も検討する。
各社がEVとシェアを組み合わせたサービスを提供する背景には互いの相性の良さがある。ナカニシ自動車産業リサーチの中西孝樹代表は「車とエネルギーは切っても切り離せない関係にあり、EVのシェアは車両や電力の管理が容易になる。双方を紐づけることで、他の手段を含め循環型の移動社会を構築できる可能性がある」と分析する。
例えば、日本では中長距離移動には既存の移動手段が適しているものの、短時間・短距離移動などラストワンマイルを埋めるための利用にEVの活用が期待される。さらに、その実現に向けてエネルギーの管理体制を整備できれば効率的な運用のほか、災害時にEVの電源利用や電力のシェアなどにも応用できる。
普及道半ば「商機」創出へ
一方で、EVとシェア共にまだ完全に普及したとは言えない。「空間」や「モノ」などのシェアリングエコノミー(共有型経済)に関するPwCコンサルティング(東京都千代田区)の調査では、「移動」が認知度のトップであるものの、その利用は大きく落ち込む。利用者に「活用したい」と思わせる意欲刺激がまだ弱く、EVについては航続距離などへの懸念がある。
さらにEVの普及について、ゴールドマン・サックス証券の湯沢康太マネージング・ディレクターは「本格普及には電池コストなどの課題があり、一足飛びにEV化が訪れるとは見ていない」と指摘。日本政府の電動化シナリオはハイブリッド車(HV)を組み合わせた日系自動車メーカーの想定に近く、欧州や中国などと比べてもEV化は緩やかだ。
ただEVとシェアを組み合わせることで、それぞれの課題をクリアし事業性を上げる可能性が出てきた。効率的な車両運用が求められるシェアにとって、短時間・短距離での利用に適したEVは扱いやすい。価格を課題とするEVにとっても、シェアで幅広い使われ方が促進されればコストを吸収できる。
トヨタの寺師茂樹副社長は「EV事業はシェアなど新たなビジネスによって事業化の展望が見えてきた」と語る。EVとシェアを単体で提供するのではなく、抱き合わせのビジネスモデルで勝負する時代が到来している。
日刊工業新聞2019年8月15日