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最悪の日韓関係で開催される「G7」、不協和音はさらに広がるのか

自由で開かれた経済圏に歪み
最悪の日韓関係で開催される「G7」、不協和音はさらに広がるのか

仏ビアリッツサミットの公式フェイスブックページより

 外交・通商問題が一つの節目を迎える。24―26日にフランスで先進7カ国(G7)首脳会議(サミット)が開かれ、通商や安全保障の分野で各国が結束できるかが焦点になる。同時に日米首脳会談も予定され、貿易協議は大詰めの段階に入る。さらに韓国政府は22日、軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄を発表し、日本政府は28日に貿易管理上の優遇国から韓国を除外する措置を発動する。日韓関係は最悪の事態に陥りつつある。

 G7サミットは開催前から不協和音が生じている。トランプ米大統領は「ロシアを(G7に)加えるのが適切だ」と主張したのに対し、ドイツや英国は「時期尚早」と一蹴。共産圏に対抗する国際協調体制に亀裂が生じている。また首脳宣言の採択も自由貿易などで意見の隔たりが大きく、見送られる方向だ。欧米の対立が鮮明になれば、円高の進行など金融市場への影響は避けられない。

 日米首脳会談では貿易協議が最終段階に入る。日本は農産物の関税引き下げと引き換えに、自動車分野では米国側の関税引き下げを狙う。

 一方、米国は自動車の輸入規制や安全保障面の負担をちらつかせ、より有利な条件を引き出す構えだ。会談で大統領再選を目指すトランプ大統領が早期の妥結を迫るのは間違いない。日本は無理な要求に屈せず「バランスのとれた全体像」(政府高官)に軌道修正を促すべきだ。

 一方、日韓問題は出口が見えない。韓国政府は24日に期限を迎えるGSOMIAを、22日に破棄すると発表し、日米韓の安全保障問題にまで発展している。

 日本が28日に貿易管理上の優遇国から韓国を除くと、さらに韓国政府が反日運動をあおる恐れがある。日本は、違和感のある言動を繰り返す韓国政府に冷静に対処しつつ、欧米など国際社会には積極的に情報発信する必要がある。

 外交・通商問題に振り回される日本企業は、さらなる悪影響が懸念される。G7は米中対立など国際紛争の調停役として機能できておらず、貿易や投資の停滞を抑止できていない。

 日韓問題も経済的な影響は限定的とはいえ、韓国側の歴史問題を絡めた対日行為は長期的に続く。今後、世界景気は後退局面に入り「日本も輸出産業を中心に業績が悪化する可能性が高い」(銀行系エコノミスト)。

 国際秩序が揺らぎ、中国やロシアにつけいる隙を与えれば、自由で開かれた経済圏に歪みが生じ、ひいては日本企業の活動にも制約が生じる。日本の経営者は、自由貿易と民主主義を堅持する視座で長期戦略を構想する必要がある。
(取材・敷田寛明)
日刊工業新聞2019年8月23日

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