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「日中関係より民間の対立も根深い」 日韓問題で財界首脳のホンネ

緊張緩和の糸口見えず
「日中関係より民間の対立も根深い」 日韓問題で財界首脳のホンネ

2018年の日中韓ビジネスサミットで挨拶する韓国の文在寅大統領

日韓の緊張緩和の糸口が見えない。韓国は日本による半導体材料の輸出規制強化を非難し、撤回を求める一方、日本政府は世界貿易機関(WTO)協定にのっとった対応と主張し、議論は平行線をたどっている。11日に長野県軽井沢町で始まった経済同友会の夏季セミナーでも、政治的対立が両国の経済関係に水を差す事態を憂慮する声が聞こえてきた。

 「日中関係に比べて民間の対立も根深いからね」。参加経営者の一人はこうこぼした。

 日韓関係は予断を許さない状況が続く。韓国のサムスン電子やSKハイニックスは一部材料については最大4カ月分の在庫を確保しているが、規制対象となる材料は大半を日本に依存する。輸出規制が強化され、優遇措置が取りやめられると、契約ごとに個別許可が義務付けられ、サプライチェーンの見直しは不可避だ。

 韓国の文在寅大統領は国内大手30社や経済団体のトップらと輸出規制強化への対策を協議。「事態が中長期化する可能性に備えなければならない」と語っている。

 今後の焦点は韓国が実際にWTOへの提訴に踏み切るかどうか。ただ、提訴により泥沼化することを避けるために、韓国は日韓双方の同盟国である米国に介入を求める外交手段も探る。

 NECの遠藤信博会長は「(経済活動に)どのようなインパクトが出てくるか注視しなければならない。今後の交渉がどのようになるか見守らなければならないが、(日本政府の動きにより)韓国側も重要なイシューとして認識したはずだ」と語る。

 ある経営者は「今回の問題が収束したとしても根っこは放置されたまま。お互いに小学校や中学校の歴史教育から考えなければならない問題ではないか」と指摘する。

 経済同友会の夏季フォーラムは12日までの2日間の日程。「“いて欲しい国、いなくては困る国、日本”の実現に向けて」を統一テーマに、国際競争力強化に向けたイノベーションの創出や生産性革新、国の財政健全化など多岐にわたる問題を議論する。12日に「軽井沢アピール2019」を採択して閉会する。
日刊工業新聞2019年7月12日(政治・経済)

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