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暗闇、悪天候などで隠されていたものが見えるように!画像鮮明化のすごさ

暗闇、悪天候などで隠されていたものが見えるように!画像鮮明化のすごさ

鮮明化前の画像(左)と鮮明化した画像

 画像鮮明化アルゴリズム開発、関連機器&ソフト・システム開発販売を行う株式会社ロジック・アンド・デザイン(神戸市中央区)が手掛ける画像鮮明化装置「LISr」(ロジカル・イメージ・センシタイザーシリーズ)が監視、医療などさまざまな分野で使われ始めている。
 まずは、「画像鮮明化」がどのようなものなのか、いくつかの画像の鮮明化前後を見比べてみてもらいたい。左が鮮明化前、右がLISrでの鮮明化後の画像となっている。

霧山

配電盤

コンクリートの柱



 これらのように、画像鮮明化技術は元の画像のうち「データには残っているが見えていないもの」を見えるようにする技術である。霧や暗闇など状態にかかわらず不鮮明な部分を可視化する。特殊なカメラなどは必要なく、普通のカメラで撮った写真や動画をそのまま使用できる。

 鮮明化とは一般には低いコントラストの映像を高いコントラストに変換する効果を表すことが多い。コントラストを高くする方法は主にトーンマップ、レベル補正、ヒストグラム平坦化の3つがあるが、最近は画面を分割して各部分でヒストグラム平坦化を行う適応的AHE(AdaptiveHE)が主流になってきている。しかしAHEはノイズも鮮明化されてしまうため、ノイズ対策を内包した鮮明化を各社が採用しているが、処理が重たい、条件に応じた設定が必要などの問題がある。
 LISrのアルゴリズムは画面分割を行なわずピクセル単位で演算を行うことにより、処理速度と精度が向上した。さらに全自動計算で条件変化に適応するため、パラメータ設定がほぼ必要ないなどの特徴がある。「8月に発売された『LISr』第3世代では、ノイズを抑え、色の再現性を高める改善などが行われ、より自然な見え方になっています」(小林正浩取締役技術開発本部長)。

小林正浩技術開発本部長(左)、佐藤公明社長

 LISrの商品構成はハード機器、ソフトウエア、ネットワークカメラとなっている。ハード機器「LISr-101」は映像をリアルタイムに鮮明化する用途に向いている。例えば監視カメラで海上や悪天候の場所をチェックしなければならない時、ドローンでインフラ点検をする際などに活躍する。
 ソフトウエア「LISr-Capture」はPCなどのデスクトップ上で画像や映像を鮮明化する製品となっており、医療現場でレントゲン画像を見る際などを想定している。USBカメラにも対応している。
 ネットワークカメラ「LISr-IPC1」はカメラに画像鮮明化技術を内蔵したものとなっている。

 アルゴリズムは小林技術開発本部長が開発したもので、もともと原子力発電所の海上監視に向けて開発されたものだった。「3年前にこの技術に出会い、これを医療用にも活用できるのではと考え、会社を立ち上げました」(佐藤公明社長)。現在は京都府立医科大学眼科学教室の研究に使用され、ニプロと独占販売契約を結び2月よりソフトウエアの販売を開始するなど、広がりを見せている。そのほか税関、警察など幅広く導入されている。
 2018年11月に第1回目の資金調達を出資型クラウドファンディングで行い、5分で230人から4000万円を調達した。2回目は3時間で300人から4400万円を調達。一般からの出資が多く、技術に対する興味関心の高さと、評価がされた結果だと佐藤社長は話す。
 今後はハード機器、ソフトウエアの拡販とともにアルゴリズムを他社製品に導入することも積極的に行う。「例えば『Intel』のように、さまざまな製品に『LISr』が搭載され、マークが付けられることを目指したい」(佐藤社長)。
ニュースイッチオリジナル
昆梓紗
昆梓紗 Kon Azusa デジタルメディア局DX編集部 記者
監視、医療だけでなく、例えば工場での検査やニュース映像、個人の趣味で画像や写真を扱う際にも役立ちそうです。今後さらに用途が広がりそうです。

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