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なぜ免許証の写真は親しみがなく暗い表情になってしまうのか

撮り手と被写体のコミュニケーション次第?
 最近、偶然にも同じタイミングで2回、証明写真を撮影される機会があった。一つは運転免許証の更新が目的で、もう一つは社内の人事部に提出するためだった。免許用の顔は予想通り親しみがなく暗い。人事向けは幾分柔らかい表情で仕上がった。

 両者の違いはどこから生まれたのか。決定的だったのは、撮影時のコミュニケーションの有無だ。免許更新センターでは、列に並び順番がくると数秒で撮影終了。一方、社内人事用の撮影では「少し目ヂカラを入れて」などと、カメラマンが気さくに声を掛けてくれた。

 デジタルカメラの普及で撮影という行為の難易度は下がった。シャッターを押す前にディスプレーで構図や明るさを確認できるので、素人でもそれなりの写真を撮影できるようになった。

 ただ、撮り手と被写体のコミュニケーションは希薄になったように思う。スマートフォンと会員制交流サイト(SNS)の普及で、写真がコミュニケーションツールになる中で皮肉な状況だ。

 お尋ね者のような暗い表情の写真では、SNSでたくさんの「いいね」はもらえまい。良い写真をシェアできるよう、デジカメやスマホのディスプレーを確認しつつも、目の前の被写体との対話を楽しみたい。
日刊工業新聞2019年7月26日

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