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島津製作所、ラボ運営「AIで自動化へ」計画の全貌

計画から検証まで
島津製作所、ラボ運営「AIで自動化へ」計画の全貌

基盤技術研究所は来夏に新研究棟を開設して開発機能を大幅拡充する(完成イメージ)

 島津製作所は人工知能(AI)によりラボ(研究所)の運営を高度化する研究を始めた。試験設備やロボットなどにAIを搭載し、先端分析計測機器などを使った実験の計画立案から実作業、結果解釈、その解釈を元にした次の実験計画立案といった一連の作業をAIに任せ、新たな発見を後押しする。自動化によりラボ運営を効率化するとともに、ビッグデータ(大量データ)の収集・認識・処理などで人間に勝るAIならではの成果を期待する。2020年代前半の実用化を目指す。

 島津製作所の基盤技術研究所(京都府精華町)が主体となって取り組む。同研究所は先端的基礎技術の研究開発を担当し、機能拡充を現在進めている。すでに既存の自動化技術により、人手に頼った実験作業の機械化などは進んでいる。今回、基盤研が取り組むのはラボの完全自動化。テーマを与えると、そのテーマに対するアプローチから先の作業はAIが担う構想だ。

 研究に必要な文献の検索、実験結果の解釈、実験データの処理・可視化など、一連の作業の中で部分的なAI活用はすでに実用化しているものもある。外部とも連携を進めている。今回の構想では、主力の分析計測機器などを使った実験でAIの成果を確認できたものから順次活用しつつ、中長期的には有機的に結び付けてシステムとして組み上げていく方針だ。

 基盤研は、先端分析、脳五感・革新バイオ、AIなどの研究の推進と、オープンイノベーションによる新しい価値創造、社会課題解決を目的に新研究棟を開設する計画。既存設備の改修を含めて総投資額は約86億円。20年8月の完成予定で、新研究棟も活用してAIの研究開発を加速する。

日刊工業新聞2019年7月19日

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