蒲焼き文化を守る、イオンのウナギ保全活動がつけた道筋
持続可能な調達へ
イオンがインドネシアでウナギの保全プロジェクトを始めて1年が経過した。現地のシラスウナギ(ウナギの稚魚)漁の実態を調べ、適切に管理されて育ったインドネシア産ウナギを日本で発売した。ニホンウナギも資源保全のルールを守ったウナギの調達を増やす。世界的に絶滅危惧種となったウナギの調達を持続可能にする道筋が見えてきた。
イオンは2018年、中央大学の海部健三准教授、非政府組織(NGO)の世界自然保護基金(WWF)などと協力し、インドネシアのジャワ島南部でシラスウナギの採捕量を調べた。ウナギが減らない範囲での適切な採捕量を知る基礎データとするためだ。漁民にはウナギが絶滅すると生計をたてる手段を失うと説明し、乱獲を防ぐ重要性を啓発した。19年はウナギを守りながら漁ができる指針をつくって運用し、同国の他地区にも活動を広げる。すでに成果をあげており、日本の店頭で6月、適切に養殖したインドネシア産ウナギを発売した。
「ニホンウナギの二の舞いにしたくない」。イオンリテールの山本泰幸グループ商品戦略部マネージャーは言葉に力を込める。国際自然保護連合はニホンウナギを絶滅の危険性が2番目に高い種に指定している。
もっとも絶滅の危険性が高いヨーロッパウナギは取引が制限されており、イオンは取り扱いを中止した。
同社のウナギ販売数も01年のピークから10分の1に減少。インドネシア産ウナギ(ビカーラ種)は準絶滅危惧種であり、減少に歯止めをかけようとイオンが保全に乗り出した。
イオンはニホンウナギでも対策を始めた。資源保護のために養殖量の上限があるが、国は無許可でシラスウナギを取引する業者の存在を指摘している。そこでイオンは23年までに、調達するウナギ全量をシラスウナギの採捕地が分かるようにすることを決めた。
すでに19年、静岡県産シラスウナギを県内の養殖場で育てたウナギを調達・発売した。同様の仕組みを国内に普及させるほか、中国でも実験する。イオンの三宅香執行役は「資源を守り、営業も続けたいビジョンを関係者と共有し、産地不明のシラスウナギを扱わないサプライチェーンをつくる」と意気込む。
再生可能な範囲で資源を利用する「持続可能な調達」が産業界のキーワードだ。持続可能な開発目標(SDGs)では目標12に「30年までに天然資源の持続可能な管理と効率的な利用を達成する」と明記している。天然資源は量が減ると価格が高騰し、入手が困難になると企業は事業を継続できない。乱獲の防止は、将来の経営リスクの回避につながる。
森林や海産物、パーム油では持続可能性に配慮した生産を示す国際基準があり、日本企業も調達を増やしている。三宅執行役は「企業は消費者にも狙いや思いを伝えてほしい」と訴える。環境や社会に配慮した商品を選ぶ消費者が増えると、企業も持続可能な調達を推進する動機づけとなる。
稚魚漁調査、乱獲防止の重要さ啓発
イオンは2018年、中央大学の海部健三准教授、非政府組織(NGO)の世界自然保護基金(WWF)などと協力し、インドネシアのジャワ島南部でシラスウナギの採捕量を調べた。ウナギが減らない範囲での適切な採捕量を知る基礎データとするためだ。漁民にはウナギが絶滅すると生計をたてる手段を失うと説明し、乱獲を防ぐ重要性を啓発した。19年はウナギを守りながら漁ができる指針をつくって運用し、同国の他地区にも活動を広げる。すでに成果をあげており、日本の店頭で6月、適切に養殖したインドネシア産ウナギを発売した。
「ニホンウナギの二の舞いにしたくない」。イオンリテールの山本泰幸グループ商品戦略部マネージャーは言葉に力を込める。国際自然保護連合はニホンウナギを絶滅の危険性が2番目に高い種に指定している。
もっとも絶滅の危険性が高いヨーロッパウナギは取引が制限されており、イオンは取り扱いを中止した。
採捕地確認、23年までに発売品全量
同社のウナギ販売数も01年のピークから10分の1に減少。インドネシア産ウナギ(ビカーラ種)は準絶滅危惧種であり、減少に歯止めをかけようとイオンが保全に乗り出した。
イオンはニホンウナギでも対策を始めた。資源保護のために養殖量の上限があるが、国は無許可でシラスウナギを取引する業者の存在を指摘している。そこでイオンは23年までに、調達するウナギ全量をシラスウナギの採捕地が分かるようにすることを決めた。
すでに19年、静岡県産シラスウナギを県内の養殖場で育てたウナギを調達・発売した。同様の仕組みを国内に普及させるほか、中国でも実験する。イオンの三宅香執行役は「資源を守り、営業も続けたいビジョンを関係者と共有し、産地不明のシラスウナギを扱わないサプライチェーンをつくる」と意気込む。
持続可能な調達 資源利用・再生、産業界のキーワード
再生可能な範囲で資源を利用する「持続可能な調達」が産業界のキーワードだ。持続可能な開発目標(SDGs)では目標12に「30年までに天然資源の持続可能な管理と効率的な利用を達成する」と明記している。天然資源は量が減ると価格が高騰し、入手が困難になると企業は事業を継続できない。乱獲の防止は、将来の経営リスクの回避につながる。
森林や海産物、パーム油では持続可能性に配慮した生産を示す国際基準があり、日本企業も調達を増やしている。三宅執行役は「企業は消費者にも狙いや思いを伝えてほしい」と訴える。環境や社会に配慮した商品を選ぶ消費者が増えると、企業も持続可能な調達を推進する動機づけとなる。
日刊工業新聞2019年7月12日