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“清宮パパ”は不惑の時に何を考え、どんな夢を描いていたか

2008 清宮克幸インタビュー「(日本代表監督を)やりたい。そのために今できることをやるのみ」

組織を生かすために個が責任を持つ


 ―サンゴリアスの強さの秘訣(ひけつ)は。
 「今、チームから日本代表を8人輩出している。おそらくジョン・カーワン(日本代表ヘッドコーチ)に、選手一人ひとりの良さが見えているからだと思う。僕は一人ひとりの選手の長所が生かせるラグビーを常に考えている。例えば、ここはあいつじゃないと抜けていないな、といったプレーを心がけている。一人ひとりがよくみえることで強く見える」

 ―個を生かすことで、組織も活性化させるということですか。
 「個も組織もどっちも大事。サンゴリアスのフィロソフィーは“個を生かすために組織があり、組織を生かすために個が責任を持つ”。選手たちはチームから許容量を超えるぐらいのやるべきことを求められる。求められるのは組織の中で何をやるべきかということであり、選手は自分を生かすためにいろんなことをやっている。そう思うと選手も救われる。選手の視野が広がる」

 ―逆にチームに足りないものは。
 「たくさんある。結果を出すことだけではない。“リーディング・ジャパン・ラグビー”をビジョンに掲げている。このビジョンは今のところ全然できていない。すべてのラグビー・プレーヤーのあこがれになるようなチームだ。やるべきことはたくさんある」

 「世界の中で日本ラグビーの立ち位置を作る」

 ―野球やサッカーなど他のスポーツに比べ、ラグビー人気は盛り上がりに欠けます。
 「問題点はわかっているので、(解決は)それほど難しい話ではない。お金さえあれば…。僕の将来のビジョンはこの競技の魅力をどんどん伝えていくこと。日本ラグビーの世界の立ち位置というものをしっかり作ることだ」

 「(世界から見て)日本人のプレーヤーの価値は低いかもしれないが、トップリーグは世界の中でもプロリーグとして認知されている。リーグとしてしっかり情報発信していくことで、世界からもっといい選手が来てもらえる。ラグビーW杯を日本で開催したいのも、日本というものを情報発信する狙いもある。単に開催することだけが夢ではない。それが日本でラグビーを志す人にもつながってくる」

 ―将来は日本代表監督という考えは。
 「やりたいからといってやれるものではない。ただ、自分の力を一番使えるポジションだと思っている。やりたいかやりたくないかで言えば、やりたい。そのために今できることをやるのみだ」
 <プロフィル>
 清宮克幸(きよみや・かつゆき)大阪府立茨田高校時代にラグビーを始める。3年時に全国大会に出場、高校日本代表に選出される。86年に早大に入学し、1年時からレギュラーとして活躍。4年時に主将としてチームを学生日本一に導く。90年サントリー入社。92―94年に主将を務めるなど、中心選手としてチームをけん引。01年引退。

 その後、サントリーに籍を置きながら、早大ラグビー蹴球部監督に就任。低迷するチームを改革し、就任後の関東大学対抗戦で11年ぶりの優勝。05年シーズンの日本選手権では学生がトップリーグチームを倒すなど輝かしい実績を残す。06年に古巣のサンゴリアス監督に就任。2年目にマイクロソフトカップ優勝。2011年にヤマハ発動機監督に就任。トップリーグ降格の危機に瀕していたチームを立て直し、14―15シーズン日本選手権を制覇した。大阪府出身、48歳。
日刊工業新聞2008年04月24日付「あの人に聞きたい」
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
幸太郎選手を見て野球を志す子供たちはとてつもなく増えたと思う。ラグビー界にもスターが必要だ。2019年の地元開催で日本は活躍しないといけない。まず来月、イングランドで開催させるW杯も見てみよう。

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