“清宮パパ”は不惑の時に何を考え、どんな夢を描いていたか
2008 清宮克幸インタビュー「(日本代表監督を)やりたい。そのために今できることをやるのみ」
今や、夏の甲子園で活躍した早実の「清宮幸太郎選手の父」として有名になった清宮克幸氏。7年前の清宮氏は当時40歳。サントリー・サンゴリアスの監督という立場。翌年、ラグビーワールドカップの日本開催が決まるが、当時から「日本代表の監督になりたい」と語っていた。現在のエディー・ジョーンズ・ヘッドコーチが9月のW杯イングランド大会終了後に退任、後任の指揮官に清宮氏が浮上する可能性もある。“勝負のセオリー”に迫ったインタビューを紹介する。
―昨シーズンはトップリーグは制したが、日本選手権決勝で敗北。同じ相手(三洋電機)で何が違ったのでしょうか。
「トップリーグファイナルはサントリー、三洋ともに落とせない試合で、さぐり合いの状態。お互いのいい部分が出せなかった。一方、日本選手権はファイナルからのプラスアルファしかなかったサントリーに比べ、何も失うものがない三洋は、うまくいかなかったことを修正する点で“伸びしろ”は大きい。試合展開は三洋にとって好都合、サントリーにとって痛い試合となった」
「ただ負けから新しい強さが生まれる。負けたことでチームの中でもう一度、改革しなければいけないという意識が生まれた。仮に連勝していれば、組織的な改革が後手に回ったかもしれない。ゼネラル・マネージャー(GM)も代わり、組織体制も変わった。サンゴリアスはこれまで10年くらいずっと同じシステムで運営してきた。それは10年前から築き上げたチームに自信を持っていたから。一歩踏み出すためには負けが必要だったかもしれない。今回の負けで5年先、10年先が見えるようになった」
―監督として、選手とのかかわりやコミュニケーションはどのように取っていますか。
「チームを勝たせる、日本一を取らせるという目標に対し、自分が正しいと思う道に引っ張っていく。引っ張るためには“ぶれない軸”を持たないといけない。選手に対して僕の考えはこうだ、とわかってもらうことが必要。選手からのネガティブな意見にもしっかり話し合いをして、説得するという気概はいつも持っている」
二足のわらじを履くことで成長する
―サントリーの前に早稲田大学でも監督に就任しています。二つのチームでの違いは。
「監督に大きな違いはない。ただ学生にないものを社会人が持ち、社会人が持っていないものを学生は持っている。学生は常にもう後がないという熱さを持っている。そういうところを見て、社会人が足りない熱さみたいなものを社会人に注入している。逆に学生には社会人が持っているシステムとかノウハウとかを授けたい。学生の監督をやっていなかったら、(今の監督を)できなかったかもしれない」
「違う立場で何かをすることが次に生きる。10年間くらいの間、仕事とラグビーを両立していた。だからこそ早稲田大学の監督もできた。社会人の経験もなく、その競技だけしか知らなかったら僕はできなかった。プレゼンテーション力やコミュニケーション力、発想力など、社会人で培うものはどれも監督に必要なスキル。二足のわらじを履くことで成長する。同時に二つ、三つやることで互いの良いところを吸収し、活用し合える」
―セオリーを大事にしていると聞きました。
「僕は“ノーム(規範)”とか“サンゴリアス・ベース”と言っている。これは戦うための基盤。例えば試合中に選手がプレーについてこうすべきだったと考える。自分たちのノームに照らし合わせて、自然と言葉が出てくる。そのために常に『なぜ』と問いかけることが絶対に必要。それができていなければ勝てないし、選手たちがなぜそういうことをやるのか理解していないとノームは崩れる」
「基本を使ってどう応用力を出すかが勝負で問われる。だから本質を理解していないと駄目。大事なところはマニュアルと違うということ。ある程度のチームでは、マニュアルがレベルを上げるのに有効だが、本当に一番になりたいというチームでは絶対結果が出ない。僕は“こうしなければならない”ではなく“こうしたほうがいい”というのを心がけている」
「規範」は戦うための基盤
―昨シーズンはトップリーグは制したが、日本選手権決勝で敗北。同じ相手(三洋電機)で何が違ったのでしょうか。
「トップリーグファイナルはサントリー、三洋ともに落とせない試合で、さぐり合いの状態。お互いのいい部分が出せなかった。一方、日本選手権はファイナルからのプラスアルファしかなかったサントリーに比べ、何も失うものがない三洋は、うまくいかなかったことを修正する点で“伸びしろ”は大きい。試合展開は三洋にとって好都合、サントリーにとって痛い試合となった」
「ただ負けから新しい強さが生まれる。負けたことでチームの中でもう一度、改革しなければいけないという意識が生まれた。仮に連勝していれば、組織的な改革が後手に回ったかもしれない。ゼネラル・マネージャー(GM)も代わり、組織体制も変わった。サンゴリアスはこれまで10年くらいずっと同じシステムで運営してきた。それは10年前から築き上げたチームに自信を持っていたから。一歩踏み出すためには負けが必要だったかもしれない。今回の負けで5年先、10年先が見えるようになった」
―監督として、選手とのかかわりやコミュニケーションはどのように取っていますか。
「チームを勝たせる、日本一を取らせるという目標に対し、自分が正しいと思う道に引っ張っていく。引っ張るためには“ぶれない軸”を持たないといけない。選手に対して僕の考えはこうだ、とわかってもらうことが必要。選手からのネガティブな意見にもしっかり話し合いをして、説得するという気概はいつも持っている」
二足のわらじを履くことで成長する
―サントリーの前に早稲田大学でも監督に就任しています。二つのチームでの違いは。
「監督に大きな違いはない。ただ学生にないものを社会人が持ち、社会人が持っていないものを学生は持っている。学生は常にもう後がないという熱さを持っている。そういうところを見て、社会人が足りない熱さみたいなものを社会人に注入している。逆に学生には社会人が持っているシステムとかノウハウとかを授けたい。学生の監督をやっていなかったら、(今の監督を)できなかったかもしれない」
「違う立場で何かをすることが次に生きる。10年間くらいの間、仕事とラグビーを両立していた。だからこそ早稲田大学の監督もできた。社会人の経験もなく、その競技だけしか知らなかったら僕はできなかった。プレゼンテーション力やコミュニケーション力、発想力など、社会人で培うものはどれも監督に必要なスキル。二足のわらじを履くことで成長する。同時に二つ、三つやることで互いの良いところを吸収し、活用し合える」
―セオリーを大事にしていると聞きました。
「僕は“ノーム(規範)”とか“サンゴリアス・ベース”と言っている。これは戦うための基盤。例えば試合中に選手がプレーについてこうすべきだったと考える。自分たちのノームに照らし合わせて、自然と言葉が出てくる。そのために常に『なぜ』と問いかけることが絶対に必要。それができていなければ勝てないし、選手たちがなぜそういうことをやるのか理解していないとノームは崩れる」
「基本を使ってどう応用力を出すかが勝負で問われる。だから本質を理解していないと駄目。大事なところはマニュアルと違うということ。ある程度のチームでは、マニュアルがレベルを上げるのに有効だが、本当に一番になりたいというチームでは絶対結果が出ない。僕は“こうしなければならない”ではなく“こうしたほうがいい”というのを心がけている」
日刊工業新聞2008年04月24日付「あの人に聞きたい」