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ソフトバンクとトヨタの看板を背負うMONET社長に直撃、「僕の信念を話そう」
宮川潤一社長「インターネットの世界と同じ轍(てつ)を踏みたくない」
世界的に加速するMaaS(モビリティー・アズ・ア・サービス)への取り組み。日本には日本流のアプローチ、日本だからこそ克服できる課題があるはずだ。
「まだまだ勝ち筋、成功モデルが見えない世界。だからこそ、できるだけ多くの挑戦、トライアルの機会を創出し、フィードバックを繰り返すサイクルを回すことで社会イノベーションにつなげたい」。6月21日、都内で開催された「スマートモビリティチャレンジシンポジウム」の冒頭、経済産業省の小林大和参事官はこう語った。
経済産業省と国土交通省は、地域と企業との協働による意欲的な挑戦を後押しするプロジェクトをスタート。自治体や企業などが幅広く参加する協議会(6月21日時点で、60の自治体を含む148の団体が加盟)を発足し、各地で展開される実証実験を通じて得られる知見や課題の共有を進めることにしている。
イノベーションの担い手は、革新的な技術やビジネスモデルを生み出す企業や地域である。しかし、MaaSを広く社会に普及するうえで、国が取り組むべき課題は多い。こうした政府の動きと歩調を合わせ、オールジャパンでMaaSプラットフォームづくりに挑むのが、ソフトバンクとトヨタ自動車などによる共同出資会社「MONET Technologies(モネ・テクノロジーズ)」である。
今回のシンポジウムにも登壇し、MaaS普及に向けた課題を自治体やサービス提供者から集め、今後、官公庁との間で共有していくという。そんな同社が描く日本発MaaSの世界観、そして実現の原動力となる協業のカタチとはー。
モネ・テクノロジーズは次世代のモビリティー社会におけるプラットフォームづくりを目指しています。車両を開発するのは自動車メーカーの領域ですが、モビリティーとサービスが連携した高度な移動サービスを提供することは僕らの役割です。
ソフトバンクとトヨタという一見異色の組み合わせは、まず、リアルなものづくりの場面でその効果を発揮すると考えています。自動車メーカーは各社独自の開発力を持っていますが、モビリティーを通じて新たな事業を提供したいと考える企業にとって、個々の仕様に合わせてサービスを開発するのは現実的ではありません。
モネが、メーカーとサービス側の架け橋となって開発ニーズを「翻訳」し、ひとつのコンポーネントを提供するー。こんな役割が担えると自負しています。
2018年3月の発足当時、88社だったモネ・コンソーシアムへの参加者は、現在では250社以上を数えます。各社がMaaSとして実現したいことをヒアリングした上で、実証環境を整えている段階です。
17の自治体とも連携しており、年内にはすべての自治体で実証実験がスタートする予定です。例えば長野県伊那市では移動診察車の実証を始めますが、現状の法制度の枠組みの下で実現できる実証にはどんどん取り組んでいく方針です。
だからこそ、今後の国の政策にはせめて民間企業並みのスピード感を求めます。「できます」と言ってから実現に半年もかかるとしたら、これは民間の感覚、とりわけソフトバンクのビジネス感覚からするとできないことと等しいのです。
今回、日本は世界に類をみないMaaSプラットフォームを作り出そうとしている。その事業構造がつまびらかになっている以上、海外勢との競合は必至です。
だから少しでも早く事業を軌道に乗せ、先行しなければならないのです。米アップルやグーグルに席巻されたインターネットの世界と同じ轍(てつ)を踏みたくない僕の強い信念でもあります。
各地でさまざまな実証を重ねる過程で、みえてきた課題もあります。例えばオンデマンドバスの柔軟な運用・料金体制の設定です。オンデマンドバスは、輸送効率性に優れる路線バスと、快適性を持つタクシーの中間に位置づけられますが、現行の法制度ではその良さが生かせない。
移動型店舗をめぐる問題もあります。「不動産」が「可動産」に変化する視点で捉えるとイメージしやすいのですが、所在地をベースに営業許可を取得する枠組みがなじまない。
あるいは車両のマルチタスク化など現行制度が想定していなかったモビリティー形態にどう対応するのか。これら現場が直面するさまざまな課題を国にフィードバックし、まずは認識を共有することが打開策につながると考えます。だからこそ、官民で情報共有を進め、横断的な課題の整理を進める「スマートモビリティチャレンジ」の取り組みには期待しています。
MaaSを新しいテクノロジーを活用した壮大な社会実験に終わらせてはなりません。最も重要だと考えているのは、将来も収益がきちんと上がる持続可能な事業モデルを構築することです。
個人的にはモネの取り組みの中で、提供されるモビリティー規模とユーザーの満足度との因果関係や、許容されるコスト負担額といったきめ細かなデータも蓄積、そして分析していきたいと考えています。採算が合わないならどうするか。そこはビジネスマンである僕らの知恵の出しどころです。(談)
「勝ち筋が見えない」からこそ
「まだまだ勝ち筋、成功モデルが見えない世界。だからこそ、できるだけ多くの挑戦、トライアルの機会を創出し、フィードバックを繰り返すサイクルを回すことで社会イノベーションにつなげたい」。6月21日、都内で開催された「スマートモビリティチャレンジシンポジウム」の冒頭、経済産業省の小林大和参事官はこう語った。
経済産業省と国土交通省は、地域と企業との協働による意欲的な挑戦を後押しするプロジェクトをスタート。自治体や企業などが幅広く参加する協議会(6月21日時点で、60の自治体を含む148の団体が加盟)を発足し、各地で展開される実証実験を通じて得られる知見や課題の共有を進めることにしている。
イノベーションの担い手は、革新的な技術やビジネスモデルを生み出す企業や地域である。しかし、MaaSを広く社会に普及するうえで、国が取り組むべき課題は多い。こうした政府の動きと歩調を合わせ、オールジャパンでMaaSプラットフォームづくりに挑むのが、ソフトバンクとトヨタ自動車などによる共同出資会社「MONET Technologies(モネ・テクノロジーズ)」である。
今回のシンポジウムにも登壇し、MaaS普及に向けた課題を自治体やサービス提供者から集め、今後、官公庁との間で共有していくという。そんな同社が描く日本発MaaSの世界観、そして実現の原動力となる協業のカタチとはー。
インタビュー「国の政策は民間企業並みのスピード感を」
モネ・テクノロジーズは次世代のモビリティー社会におけるプラットフォームづくりを目指しています。車両を開発するのは自動車メーカーの領域ですが、モビリティーとサービスが連携した高度な移動サービスを提供することは僕らの役割です。
ソフトバンクとトヨタという一見異色の組み合わせは、まず、リアルなものづくりの場面でその効果を発揮すると考えています。自動車メーカーは各社独自の開発力を持っていますが、モビリティーを通じて新たな事業を提供したいと考える企業にとって、個々の仕様に合わせてサービスを開発するのは現実的ではありません。
モネが、メーカーとサービス側の架け橋となって開発ニーズを「翻訳」し、ひとつのコンポーネントを提供するー。こんな役割が担えると自負しています。
2018年3月の発足当時、88社だったモネ・コンソーシアムへの参加者は、現在では250社以上を数えます。各社がMaaSとして実現したいことをヒアリングした上で、実証環境を整えている段階です。
17の自治体とも連携しており、年内にはすべての自治体で実証実験がスタートする予定です。例えば長野県伊那市では移動診察車の実証を始めますが、現状の法制度の枠組みの下で実現できる実証にはどんどん取り組んでいく方針です。
国の施策にスピード感を
だからこそ、今後の国の政策にはせめて民間企業並みのスピード感を求めます。「できます」と言ってから実現に半年もかかるとしたら、これは民間の感覚、とりわけソフトバンクのビジネス感覚からするとできないことと等しいのです。
今回、日本は世界に類をみないMaaSプラットフォームを作り出そうとしている。その事業構造がつまびらかになっている以上、海外勢との競合は必至です。
だから少しでも早く事業を軌道に乗せ、先行しなければならないのです。米アップルやグーグルに席巻されたインターネットの世界と同じ轍(てつ)を踏みたくない僕の強い信念でもあります。
実証通じ見えてきた課題
各地でさまざまな実証を重ねる過程で、みえてきた課題もあります。例えばオンデマンドバスの柔軟な運用・料金体制の設定です。オンデマンドバスは、輸送効率性に優れる路線バスと、快適性を持つタクシーの中間に位置づけられますが、現行の法制度ではその良さが生かせない。
移動型店舗をめぐる問題もあります。「不動産」が「可動産」に変化する視点で捉えるとイメージしやすいのですが、所在地をベースに営業許可を取得する枠組みがなじまない。
あるいは車両のマルチタスク化など現行制度が想定していなかったモビリティー形態にどう対応するのか。これら現場が直面するさまざまな課題を国にフィードバックし、まずは認識を共有することが打開策につながると考えます。だからこそ、官民で情報共有を進め、横断的な課題の整理を進める「スマートモビリティチャレンジ」の取り組みには期待しています。
MaaSを新しいテクノロジーを活用した壮大な社会実験に終わらせてはなりません。最も重要だと考えているのは、将来も収益がきちんと上がる持続可能な事業モデルを構築することです。
個人的にはモネの取り組みの中で、提供されるモビリティー規模とユーザーの満足度との因果関係や、許容されるコスト負担額といったきめ細かなデータも蓄積、そして分析していきたいと考えています。採算が合わないならどうするか。そこはビジネスマンである僕らの知恵の出しどころです。(談)