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グーグル前のめり、トヨタ慎重。「自動運転」で違いのなぜ?

CESで見えてきた「安全性の担保」、認識に差
グーグル前のめり、トヨタ慎重。「自動運転」で違いのなぜ?

米ウェイモが使用している自動運転車両

 11日(日本時間12日)まで開催された世界最大規模のIT・家電見本市「CES」では、自動運転も注目テーマの一つだった。独ダイムラーは、レベル4の開発に数年間で5億ユーロを投資すると発表。中国BYTON(バイトン)は、年末にレベル3に対応した電気自動車の量産を始めると発表した。積極的にアピールする背景には、多彩なサービスが見込める自動運転基盤を押さえたいとの思惑がある。ただし各社の自動運転に対する姿勢には差も出始めている。「ウェイモドライバーは最高のドライバーだ。個人所有の車にインストールできるようにしたい」―。CESを主催する全米民生技術協会(CTA)が9日(日本時間10日)開いたイベントで、米waymo(ウェイモ)のジョン・クラフチック最高経営責任者(CEO)は顔をほころばせた。

 米グーグル傘下のウェイモは18年末に自動運転を初めて実用化。スマートフォンで呼び出し目的地まで運ぶ配車サービスを手がける。自動運転を活用したサービスでは、米ゼネラル・モーターズが19年にも自動運転タクシーを実用化する見通し。欧米の自動車メーカーを中心とした海外勢が、レベル4や同5の自動運転実現に向け積極姿勢をみせる。

「MaaS市場」の覇権はどこが握る?


 一方、その動きから少し距離を置くのがトヨタ自動車だ。人工知能(AI)開発子会社の米トヨタ・リサーチ・インスティテュートのギル・プラットCEOは、CESの報道陣向けイベントで「レベル4の実現には相当な時間がかかる」と発言。完全自動運転の開発は進めるものの、まずは近い将来の搭載が見込める高度安全運転支援システムに力を入れる姿勢を示した。

 とはいえトヨタは18年にサービスとしての乗り物「MaaS(マース)」向け車両として、自動運転にも対応する電動車両「eパレット」を発表。同年10月にはソフトバンクと提携し、移動サービスを担う共同出資会社「モネテクノロジーズ」を設立すると明らかにした。eパレットを使ったサービスを20年代半ばにも始める見通しで、サービス基盤を担うプラットフォーマーへの意欲は捨てていない。

 トヨタが慎重になる要素の一つが、自動運転の安全性についての懸念だ。国や地域によっても道路状況や天候などの条件は千差万別。異なる環境でも通用する安全性をいかに担保するかは、実用化の大きな課題だ。CESで開かれたコネクテッドカーをテーマにしたトークイベントでも、登壇者から「魅力的なモビリティーサービスは安全性があってこそ実現する」との発言が聞かれた。

 先行技術を早期に投入しトップダウンでプラットフォームを押さえようとする欧米系の車メーカーと、より現実的な形で徐々に積み上げようとするトヨタ。「MaaS市場を押さえる」という共通の狙いに向け、攻防が始まっている。
CESで公開したトヨタの自動運転実験車とギル・プラット氏

(文=政年佐貴恵<米ラスベガス>)

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