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パリ航空ショーに自衛隊機、「実物」みせて防衛品輸出へ

固定翼哨戒機と輸送機を出展、政治的な「壁」も
パリ航空ショーに自衛隊機、「実物」みせて防衛品輸出へ

ベルリン・エアショーにはP1を出展

 防衛省は17日から仏パリで開かれる「パリエアショー」に、固定翼哨戒機「P1」と輸送機「C2」を出展する。同展示会への自衛隊機参加は2017年に続き2回目で、C2の出展は初。国産航空機の高い技術力について広く情報発信し、諸外国と防衛装備・技術協力を促進するとともに輸出にもつなげる。防衛装備品の海外輸出は潜水艦「そうりゅう」をはじめ“失敗の連続”。成功につながるか期待がかかる。

 「航空機の性能データなどは公開情報で事足りるが、展示会で実物を見ると説得力が全然違う。実物が目の前にあることで話も進めやすく、具体的な相談もできる」。防衛装備庁の担当者は強調する。

 P1もC2も、川崎重工業製。P1は16年、ニュージーランドで行われた訓練に派遣された実績や、18年のベルリン・エアショーに2機出展し、デモ飛行した実績もある。C2も19年2月の豪州のエアショーに1機が出展した。

 P1には一時期、ニュージーランドが関心を示したとされる。C2も長い航続距離や短距離離着陸機(STOL)能力を持つなど、飛行性能は高い。アラブ首長国連邦(UAE)も関心も持つとされるが、問題は価格の高さ。P1は1機100億円強、C2に至っては200億円近いとされ、価格競争力は低い。

 価格競争力が低いのは本を正せば、生産機数が少ないことが原因だ。P1もC2も配備された機数は10―20機レベルで量産効果が上がらず、特殊な性能が要求されるため開発コストも高くつく。輸出で機数を増やせれば、量産効果でコストダウンが期待できる。

 とはいえ防衛装備品には、相手国の国防状況に合わせて性能改善することが必要になる。C2は飛行性能は高いが、不整地着陸能力は持ち合わせていない。こうした要求に合わせて改造すれば、コストはさらに高くなる計算だ。

 一方で相手国の事情に合わせるのは「必ずしもコストアップにつながるケースばかりではない」と装備庁ではとらえている。途上国で機体だけを購入し、電子機器の仕様を簡易版にしたりすれば、価格は下げられる。電子機器以外でも日本の国情に合わせて開発された機能のうち、不必要なものを外せば、価格を下げられる可能性が高いという。

 防衛装備品の輸出はこれに加え、同盟国の関係や政治的な思惑もからむ。救難飛行艇「US2」や潜水艦「そうりゅう」輸出の際は、部品産業を育成するために相手国で建造する条件などがネックになった。部品供給や海外での機体整備体制の問題もある。民間機転用する場合は、型式取得の壁も立ちはだかる。

 米国製品の防衛依存度を抑えるためにも国産品の輸出拡大に期待をかけたいところだが、実現のハードルは高い。
(文・嶋田歩)

日刊工業新聞2019年6月13日

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