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脳の血流で単語判別、ALS患者と意思疎通する技術

ダブル技研が開発
脳の血流で単語判別、ALS患者と意思疎通する技術

開発したシステムはヘッドギア、パソコンと端末で構成する

 ダブル技研(神奈川県座間市、和田博社長、046・206・5611)は、まぶたや指が動かせなくなった筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者らを対象に、患者が思う単語を脳の血流から判別して画面に映す技術を開発した。近赤外分光法(NIRS)により脳の活動状態から「はい/いいえ」を割り出す装置の技術を応用した。伝えたい単語の1語ずつ、母音だけを患者が選び、言葉の数から伝えたい単語の候補を類推して画面に示す。パソコンと端末などで構成したシステムとして早ければ9月に発売する。

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の支援を受け、東洋大学田中尚樹教授らと開発した。

 ダブル技研が販売する福祉機器「新心語り(しんこころがたり)」の技術を応用した。頭に装着した機器から脳に近赤外光を当て、反射した光の量から、血流量が分かる。それを使い、考え事をして血流量が多くなることで「はい」、落ち着いて血流量が少なくなると「いいえ」という形で、患者の意思を示せる。

 今回、ソフトウエアなどを工夫し、この「はい」「いいえ」を使って順に、あ、い、う、え、お、終了の選択肢から伝えたい単語の母音を選ぶ形にした。例えば、犬だと、い、うを選択する。すると、約1万5000語のデータベースから日常よく利用する言葉の候補が複数画面に出てくる。介助者は候補から類推したり、合っているか患者に聞いたりして単語を確認する。

 開発したシステムは現状、はい、いいえの判別に約40秒かかり、単語を一つ示すのも時間が要る。今後はより早く選別する、選択の回数を減らす、といった技術改善を進めたいという。価格は新心語りと同じ50万6000円(センサー込み)に抑える。ダブル技研の代理店網を使い、将来は中韓や欧州でも販売する。

 ALSは約1万人に1人が発症する病気とされ、日本の患者数は約9600人との推計がある。

 重篤化すると、まばたきや眼球を動かすこともできず意思を伝えることが難しくなるケースがある。ダブル技研はロボットハンドやFA(工場自動化)システムの開発のほか、福祉機器の開発や販売を手がける。
日刊工業新聞2019年6月11日

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