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トヨタ「電動車化」一気、真摯にEV事業へ取り組むメッセージ

販売計画前倒し、日本で超小型EV投入
トヨタ「電動車化」一気、真摯にEV事業へ取り組むメッセージ

日本で超小型EVを展開する

 トヨタ自動車は7日、電動車戦略の説明会を開き、2030年に計550万台以上としていた販売目標の達成時期を、5年ほど前倒すと発表した。20年に日本で超小型電気自動車(EV)を投入するほか、新たに中国の寧徳時代新能源科技(CATL)などから電池を調達する方針も明らかにした。提携と商品投入の加速で電動車普及に向け体制を強化し、市場での存在感を高める。

 トヨタは30年に、ハイブリッド車(HV)とプラグインハイブリッド車(PHV)の合計で450万台以上、EVと燃料電池車(FCV)で計100万台以上を販売する目標を掲げていた。同日会見した寺師茂樹副社長は「電動車への期待はますます高まっている。需要に応えるべく準備をさらに急ぐ」と計画前倒しに力を込めた。

 車載電池は、すでに協業するプライムアースEVエナジーとパナソニック、豊田自動織機のほか、CATL、中国の比亜迪(BYD)、GSユアサ、東芝からも調達する方針。トヨタが20年代前半の実用化を見据え開発を進める全固体電池について、寺師副社長は「東京五輪・パラリンピックが開かれる20年に何らかの形を見せたい」と述べた。

 日本で投入予定の超小型EVは2人乗りで、近距離の移動や巡回といった用途を想定する。寺師副社長は「EVの普及には新たなビジネスモデルが必要だ」と強調。他社との協業を広げ開発から販売、リユース、廃棄までをカバーするビジネスモデルを構築する方針を示した。
トヨタ発表資料より     

トヨタ発表資料より         

トヨタ発表資料より           



スバルとは車台共同開発


 トヨタ自動車とSUBARU(スバル)は、中・小型の電気自動車(EV)専用プラットフォーム(車台)を共同開発すると発表した。2020年代前半にも同車台を採用したモデルを発売する。スバルの主力スポーツ多目的車(SUV)「フォレスター」などが属するCセグメントになる見込み。両社で開発資源を持ち寄り、開発スピードを高めてコストを圧縮する。スバルは21年度に独自開発のEV発売を計画していたが断念する。

 トヨタとスバルがEVで連携することを決めた。各国が環境規制を厳格化する中で、トヨタの電動化技術、スバルのAWD(全輪駆動)技術を持ち寄り開発の効率を高める。

 共同開発するEV専用プラットフォームは、CセグメントからDセグメントクラスのセダンやスポーツ多目的車(SUV)など複数車種にまたがって採用し、派生車種を開発しやすくする。

 従来のスバルのEV開発チームはトヨタの開発チームと合流する。スバルはトヨタやマツダ、デンソーなどが参加するEVの基盤技術開発会社「EV C・A・スピリット」にも参加。これらEVの基盤技術を共同開発するEV専用プラットフォームに生かす考え。

 スバルはトヨタと2005年に業務提携し開発や生産、販売で協業を進めてきた。12年には共同開発したFR(後輪駆動)スポーツカー「TOYOTA86」や「BRZ」を販売。18年にはトヨタの持つハイブリッド車(HV)技術の知見を生かし、スバル独自のプラグインハイブリッド車(PHV)を米国で発売している。EVでタッグを組むことで両社の距離は一層縮まる。
トヨタとスバルが共同開発するEV専用プラットフォーム

EV普及への取り組みについて説明する、トヨタの寺師茂樹副社長

日刊工業新聞2019年6月7日/8日
中西孝樹
中西孝樹 Nakanishi Takaki ナカニシ自動車産業リサーチ 代表
電動化の550万台(HEV・PHEV450万台、EV・FCEV100万台)計画は5年早まった2025年に到達 できそうだが、その前倒しの成果はほぼHEV(ハイブリッド)の急拡大にある。 EV・FCEV の成長は従来目線からそれ程大きく変化していない。「EVは単独では事業成立が容易ではない」というのが寺師副社長のメッセージ。困難を理解したうえで、トヨタがどのように真摯にEV事業に取り組むか。「EVが何台になる」とかの見出しではなく、バッテリー連携を組む意義も含め、取り組みの全体図(ホリスティック・アプローチ)を理解することが今回の説明会の重要なポイントである。

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