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「eスポーツ」の実業団、いち早く立ち上げた中小企業が得た効果

三笠製作所・石田繁樹社長インタビュー
 コンピューターゲームの対戦をスポーツ競技として捉える「eスポーツ」が広がっている。企業も社内で部活動を立ち上げたり関連事業に参入したり、新たな市場と位置付け始めた。制御盤の設計・製造を手がける三笠製作所(愛知県扶桑町)は、eスポーツの実業団をいち早く立ち上げた企業。2018年7月にチーム「キュアノス」を結成し、現在2人のプロ選手が所属する。「製造業×eスポーツ」でどんな世界が見えるのか、石田繁樹社長に現状を聞いた。

―なぜeスポーツの実業団を立ち上げたのですか。

「多様性を持った優秀な人材を採用したいからだ。eスポーツの実業団があることが求人のカギになる。同業他社だけでなく、どの企業も優秀な人材を求めており、人材獲得の競争は激しい。それならば違う切り口で獲得する。その一つがeスポーツだ」

―実際に人材は獲得できましたか。

「まず、優秀な選手が2人来てくれた。メディアに露出するようになり、eスポーツの運営を手がけたいという人材も集まってきた。キュアノスは新たな予算を確保するのではなく、1年間の求人費用で運営している。世界選手権や国民体育大会(国体)で選手が優勝すれば、会社として費用対効果は十分見込める。上位は拮抗(きっこう)しているため優勝は時の運になってしまうが、いつ優勝してもおかしくない」

―3年で黒字化すると掲げています。

「広告宣伝のためにチームを持っていない。関連する商品やサービスを展開していく。例えば、新たな選手が入団した場合には育成システムが必要だ。教育ノウハウなどをパッケージ商品として作る。筑波大学との連携プロジェクトも進む。同大学のサッカー部には対戦相手を分析して選手に伝える部門があり、キュアノスのプレー映像を見て助言を得ている。また、eスポーツは座り続けるため血流が悪くなる。バイタルデータを取り、パフォーマンスを下げない背もたれやシートを開発するプロジェクトもある」

―日立システムズとeスポーツの企業対抗戦も実施しました。

「日立システムズをはじめ、ホテルや商業施設、ゲームメーカーからの依頼や招待がある。本業での連携話もある。新しいことに取り組めば縁やチャンスが生まれる。今後ますますチームを持つ効果が出てくる」

石田繁樹社長

【記者の目/新たなコンテンツ、普及のカギ】
現在、eスポーツで収益を上げているのはコンテンツメーカーだけだが、石田社長には製造業も参画できる新たな構想がある。高さ4・5メートル、重量6トンの巨大ロボットをeスポーツのコンテンツにする取り組みだ。「5歳の子どもでも車いすの方でも楽しめる」と眼を輝かせる。eスポーツには、いつでも誰でも簡単に同じ土俵で競争できる魅力がある。ゲームという枠組みにとらわれず、eスポーツに特化した新しいコンテンツがさらなる普及のカギかもしれない。(文=川口拓洋)

※6月7日13時30~よりスマートファクトリーJapan2019(東京ビッグサイト)で、
「雑誌『工場管理』創刊65周年記念 eスポーツイベント ウイニングイレブンPESLEAGUE2019」を開催します。
三笠製作所の実業団チームと戦えるチャンスがあるかも!?
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日刊工業新聞2019年6月3日

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