ちょっと意外、「世界3位」の技術力を生かせ!東芝はAIに成長をかける
顧客ごとの課題解決
東芝は人工知能(AI)に今後の成長を賭ける。世界知的所有権機関(WIPO)によるAI技術特許ランキングでは世界3位につけた。この実力は、経営再建途上の身にとってかけがえのない財産だ。米中の技術覇権争いでも主戦場となるAIは産業構造を大きく変えうる。2023年度の売上高営業利益率目標の10%(18年度は1%)という高いハードルを越えるには唯一無二の武器が不可欠だ。
東芝はWIPOのAI技術特許ランキングで米IBMと同マイクロソフトに次ぐ世界3位で、日本国内1位とされた。画像認識や音声処理、文字認識などで高い評価を受けた。
子会社の東芝デジタルソリューションズ(川崎市幸区)ソフトウェア&AIテクノロジーセンターの古藤晋一郎センター長は「東芝のAI研究開発は50年以上の歴史があり、特許などのバックボーンが強い」と胸を張る。
1967年に手紙などの郵便番号自動読み取り区分機を世界で初めて開発したのが、画像認識の先駆けとなった。その約10年後に日本語ワープロのカナ漢字変換で言語処理技術を開発して、音声・言語のAI分野にも進出した。
同社が手がけるAIは、アナリティクスAI「サトリス」とコミュニケーションAI「リカイアス」の2種類。特にビッグデータ(大量データ)解析に使うサトリスは、工場の生産性向上や送電線検査、がん細胞検知、電力需要予測、倉庫内の作業行動推定などに活用されている。
解析能力に加え、機械学習・深層学習(ディープラーニング)用のデータが少なくても、データ自体を自動生成できる独自技術を活用してAIの精度を高められる点も強みだ。
「我々の今の事業は顧客ごとの課題を解決する上でAIを適用している。ソフトウエアだけを売るビジネスモデルではない」(古藤センター長)と、“単品売り”はしていない。半年程度かけて顧客の課題抽出からモデル構築、ソリューション提案まで面倒を見る。
標準化した簡易版サービスも一部用意するが、マネージドサービスセンターの小林賢治参事は「業務と必要なデータを固定しているので、分かりやすいが、ピッタリと合致するのが難しい」と明かす。今後は社内向けのAI事業化のガイドラインやモデル開発のプラットフォーム(基盤)をより充実させ、顧客ごとのカスタマイズの手間を抑える必要がある。
一方で東芝はジレンマも抱える。自社で長年事業を展開し多くの知見を有するエネルギーや社会インフラ、モノづくり、物流、ビル分野をやはり得意とする。各市場で今も戦っている敵にAIという“塩”を送り、競合他社の業務効率アップを助けるのか。AI事業を今後拡大していく上で難しい判断を迫られそうだ。
(文=鈴木岳志)
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●これから重電メーカーはどうなるの?
●東芝も撤退!数少ない白熱電球メーカー、100余年の生産に幕
東芝はWIPOのAI技術特許ランキングで米IBMと同マイクロソフトに次ぐ世界3位で、日本国内1位とされた。画像認識や音声処理、文字認識などで高い評価を受けた。
子会社の東芝デジタルソリューションズ(川崎市幸区)ソフトウェア&AIテクノロジーセンターの古藤晋一郎センター長は「東芝のAI研究開発は50年以上の歴史があり、特許などのバックボーンが強い」と胸を張る。
1967年に手紙などの郵便番号自動読み取り区分機を世界で初めて開発したのが、画像認識の先駆けとなった。その約10年後に日本語ワープロのカナ漢字変換で言語処理技術を開発して、音声・言語のAI分野にも進出した。
同社が手がけるAIは、アナリティクスAI「サトリス」とコミュニケーションAI「リカイアス」の2種類。特にビッグデータ(大量データ)解析に使うサトリスは、工場の生産性向上や送電線検査、がん細胞検知、電力需要予測、倉庫内の作業行動推定などに活用されている。
解析能力に加え、機械学習・深層学習(ディープラーニング)用のデータが少なくても、データ自体を自動生成できる独自技術を活用してAIの精度を高められる点も強みだ。
「我々の今の事業は顧客ごとの課題を解決する上でAIを適用している。ソフトウエアだけを売るビジネスモデルではない」(古藤センター長)と、“単品売り”はしていない。半年程度かけて顧客の課題抽出からモデル構築、ソリューション提案まで面倒を見る。
標準化した簡易版サービスも一部用意するが、マネージドサービスセンターの小林賢治参事は「業務と必要なデータを固定しているので、分かりやすいが、ピッタリと合致するのが難しい」と明かす。今後は社内向けのAI事業化のガイドラインやモデル開発のプラットフォーム(基盤)をより充実させ、顧客ごとのカスタマイズの手間を抑える必要がある。
一方で東芝はジレンマも抱える。自社で長年事業を展開し多くの知見を有するエネルギーや社会インフラ、モノづくり、物流、ビル分野をやはり得意とする。各市場で今も戦っている敵にAIという“塩”を送り、競合他社の業務効率アップを助けるのか。AI事業を今後拡大していく上で難しい判断を迫られそうだ。
(文=鈴木岳志)
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日刊工業新聞2019年5月28日