METI
麹の製造装置でシェア8割、日本の食文化支える黒子役は社員が主役
フジワラテクノアート、生き生きと働くことができる職場風土改革に挑む
醤油、味噌、清酒、本格焼酎など日本伝統の飲料、食品づくりの要となる麹(こうじ)。フジワラテクノアートは麹を自動で製造する製麹(せいきく)装置で国内シェア8割を誇るトップメーカー。2014年に来日した米国のオバマ大統領(当時)に安倍晋三首相がプレゼントしたことでも知られる、人気のあの日本酒を手がける酒造メーカーの新工場にも設備を納入している。創業からまもなく90年を迎える老舗醸造機械メーカーである同社はいま、次代を見据えた経営改革のまっただ中にある。
フジワラテクノアートは、製麹装置以外にも米や大豆など原料を洗ったり、蒸したりする醸造機械に加え、工場のプラント全体の設計、生産も請け負う。取引先には醤油、味噌、焼酎、日本酒などそれぞれの分野の業界大手の名前がずらり並び、まさに日本の食文化を支えている。ここ数年は中国や韓国、米国などからの大型受注も獲得。海外市場に照準を合わせた生産体制も構築している。
麹や酵母による培養・発酵工程を経て飲料や食品を生産する醸造業だが、その工程は製品、企業ごとに異なる。同社は顧客ごとに必要な生産機械や省力化装置を一品ごとに設計し、生産する。多種多様なニーズにきめ細かく応える経営姿勢と、それを実現する技術力。それが顧客からの信頼を長年にわたり獲得し、自動製麹装置で市場シェア8割という地歩を固める原動力となっている。
そんな同社がいま、改革のまっただ中にある。2016年に経営理念を30年ぶりに刷新し、「フジワラテクアートの志」を策定。2017年には人事制度を改めたほか、「開発ビジョン2050」を策定。2018年には健康経営に関する取り組みも開始するなど新たな施策を矢継ぎ早に打ち出している。これら一連の施策は1990年に藤原醸機産業から現在の社名に変更して以来の大改革となる。
5代目社長である藤原恵子氏の長女である藤原加奈副社長は一連の取り組みの狙いを「未来志向の会社にするための組織風土改革」と語る。顧客ごとにオーダーメードで必要な機械や装置を作り込むことから、技能伝承においては、職人気質が色濃く残っていた。
緊密な師弟関係がもたらす人材育成効果は大きい一方で、若手社員が増えてくる中、従来の延長線上だけでない組織的な人材育成、環境づくりが必要な「転換期にある」(藤原副社長)と考えるからだ。
組織力の向上と両輪をなすのが働き方改革である。残業時間の削減にとどまらず、社員が生き生きと働くことができる職場風土改革に挑む。
例えば「関係の質の向上」。知識や経験豊富な先輩社員と新入社員が1対1の関係を築き、後輩社員の課題や悩みをサポートするメンター制度を導入。メンターとなる社員は新入社員とは別の部署が基本。業務上の利害関係をなくし、率直な声に耳を傾けるよう配慮している。また女性社員を対象に成果発表などを行う「Lプロジェクト」、ランチ会なども開催している。
子育てとの両立支援においてもきめ細かい配慮が行き渡っている。現在の女性社員は20人強だが、通勤途中に子どもを預けやすいようにあえて、市街地にある企業主導型保育施設と契約を結んだ。また復帰後だけでなく、育児休業中の社員には女性の人事総務部長が毎月1回連絡を取るなど、緊密なコミュニケーションを絶やさないことで円滑な職場復帰を目指している。
女性が働きやすい企業であることは、男性にとっても同様である。実際、同社ではこうした取り組みの結果、男性社員の応募にもつながっており、人材獲得面での効果を発揮している。
2018年には本社工場棟2階に社員食堂をリニューアルした。食堂内には顧客である清酒や本格焼酎の製品が並び、料理で使う味噌や醤油も顧客の製品だ。社員食堂の一新は、社員へ栄養バランスに配慮した昼食を提供することが第一の目的ではあるが、顧客を知る場ともなっており「社員間での情報共有が進んだ」(同)。
また、食堂は社員が会議などで使うことも認めている。事務所と違う環境で仕事をすることで新しいアイデアなども出る効果を期待しているからだ。内装やテーブルなどにもこだわった食堂の一新には「それなりに費用はかかった」と明かすが、予想以上の効果が出ているようだ。
一連の取り組みは対外的な評価にもつながっている。2018年には健康経営を融資の評価基準に用いる日本政策投資銀行の健康経営格付を岡山県内の企業で初めて取得。岡山県の健康づくりアワードでは職場部門賞を受賞した。
社員全員参加で次代の成長を切り拓く好循環が回り始めている同社。 醸造業を中心とする装置分野では、日本の産業を下支えする黒子役だが、経営改革は社員が主役。次の100年に向け、さらなる躍進が期待される。
フジワラテクノアートは、製麹装置以外にも米や大豆など原料を洗ったり、蒸したりする醸造機械に加え、工場のプラント全体の設計、生産も請け負う。取引先には醤油、味噌、焼酎、日本酒などそれぞれの分野の業界大手の名前がずらり並び、まさに日本の食文化を支えている。ここ数年は中国や韓国、米国などからの大型受注も獲得。海外市場に照準を合わせた生産体制も構築している。
麹や酵母による培養・発酵工程を経て飲料や食品を生産する醸造業だが、その工程は製品、企業ごとに異なる。同社は顧客ごとに必要な生産機械や省力化装置を一品ごとに設計し、生産する。多種多様なニーズにきめ細かく応える経営姿勢と、それを実現する技術力。それが顧客からの信頼を長年にわたり獲得し、自動製麹装置で市場シェア8割という地歩を固める原動力となっている。
矢継ぎ早に新たな施策
そんな同社がいま、改革のまっただ中にある。2016年に経営理念を30年ぶりに刷新し、「フジワラテクアートの志」を策定。2017年には人事制度を改めたほか、「開発ビジョン2050」を策定。2018年には健康経営に関する取り組みも開始するなど新たな施策を矢継ぎ早に打ち出している。これら一連の施策は1990年に藤原醸機産業から現在の社名に変更して以来の大改革となる。
5代目社長である藤原恵子氏の長女である藤原加奈副社長は一連の取り組みの狙いを「未来志向の会社にするための組織風土改革」と語る。顧客ごとにオーダーメードで必要な機械や装置を作り込むことから、技能伝承においては、職人気質が色濃く残っていた。
緊密な師弟関係がもたらす人材育成効果は大きい一方で、若手社員が増えてくる中、従来の延長線上だけでない組織的な人材育成、環境づくりが必要な「転換期にある」(藤原副社長)と考えるからだ。
組織力の向上と両輪をなすのが働き方改革である。残業時間の削減にとどまらず、社員が生き生きと働くことができる職場風土改革に挑む。
例えば「関係の質の向上」。知識や経験豊富な先輩社員と新入社員が1対1の関係を築き、後輩社員の課題や悩みをサポートするメンター制度を導入。メンターとなる社員は新入社員とは別の部署が基本。業務上の利害関係をなくし、率直な声に耳を傾けるよう配慮している。また女性社員を対象に成果発表などを行う「Lプロジェクト」、ランチ会なども開催している。
子育てとの両立支援においてもきめ細かい配慮が行き渡っている。現在の女性社員は20人強だが、通勤途中に子どもを預けやすいようにあえて、市街地にある企業主導型保育施設と契約を結んだ。また復帰後だけでなく、育児休業中の社員には女性の人事総務部長が毎月1回連絡を取るなど、緊密なコミュニケーションを絶やさないことで円滑な職場復帰を目指している。
女性が働きやすい企業であることは、男性にとっても同様である。実際、同社ではこうした取り組みの結果、男性社員の応募にもつながっており、人材獲得面での効果を発揮している。
2018年には本社工場棟2階に社員食堂をリニューアルした。食堂内には顧客である清酒や本格焼酎の製品が並び、料理で使う味噌や醤油も顧客の製品だ。社員食堂の一新は、社員へ栄養バランスに配慮した昼食を提供することが第一の目的ではあるが、顧客を知る場ともなっており「社員間での情報共有が進んだ」(同)。
また、食堂は社員が会議などで使うことも認めている。事務所と違う環境で仕事をすることで新しいアイデアなども出る効果を期待しているからだ。内装やテーブルなどにもこだわった食堂の一新には「それなりに費用はかかった」と明かすが、予想以上の効果が出ているようだ。
一連の取り組みは対外的な評価にもつながっている。2018年には健康経営を融資の評価基準に用いる日本政策投資銀行の健康経営格付を岡山県内の企業で初めて取得。岡山県の健康づくりアワードでは職場部門賞を受賞した。
社員全員参加で次代の成長を切り拓く好循環が回り始めている同社。 醸造業を中心とする装置分野では、日本の産業を下支えする黒子役だが、経営改革は社員が主役。次の100年に向け、さらなる躍進が期待される。