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ミツバチ殺さぬ「殺虫剤」を導き出したAIの貢献度

住友化学が農薬の研究開発で活用
 住友化学は農薬の研究開発で人工知能(AI)の活用を進める。ミツバチへの毒性を抑えた殺虫剤成分の開発で効果を確認した。新たな農薬開発には1剤当たり5―10年を要し、それぞれ200億―300億円の費用がかかるといわれる。研究開発を効率化し、全遺伝情報(ゲノム)創薬や飛行ロボット(ドローン)などを駆使した精密農業へ経営資源を重点配分したい考えだ。

 住友化学は2018年に健康・農業関連事業研究所(兵庫県宝塚市)に新設した合成研究棟で、農薬の開発に取り組んでいる。ハチへの毒性を抑えた殺虫剤の開発にAIを導入し、算出結果から試作したところ実際に毒性の低い成分を合成できたという。

 欧州では特に農薬の規制が厳しく、殺虫剤はハチへの毒性の有無次第で販売できない可能性がある。日本などの規制も今後同じ方向に進むとみられ、AIで毒性のない新薬候補を多く導き出せれば研究開発の大幅な効率化が期待できる。今後も社内や公表された論文などのデータを基にAI活用の範囲を広げていく。

 同社は農業用ドローンベンチャーのナイルワークス(東京都渋谷区)への出資を拡大するなど、次世代農業技術への対応を加速させている。AIなどで既存の農薬開発を効率化しながら、中長期的に新たな事業の柱を育成する戦略だ。

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日刊工業新聞2019年4月11日

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