「サイレントチェンジ」にご用心!改正RoHSで起こるホラーのような話
サプライヤーによっていつの間にか材料が変えられてしまう
代替材料の評価や製品設計の見直しを急げ
すでに改正RoHSへの対応が始まっている。東芝は19年を待たずに17年1月にグリーン調達基準を改定し、家電ケーブルへのフタル酸エステルの使用を段階的に禁止する。代替材料の評価も始めた。ケーブルの可塑剤に代替材料はあるが、フタル酸エステルほどの柔らかさがでない。曲げ伸ばしによる劣化が進みやすく、長持ちもしなくなる。
現状の代替材料を使ったケーブルは、素材メーカーによって耐久性の評価手法が異なる。そこで東芝は曲げ伸ばしを自動で繰り返す試験装置を使い、同一基準で社内評価している。
また、代替材料では耐久性の向上が難しいことを前提に、製品設計の見直しも進める。曲げ伸ばしの少ない位置への配線や、きつく固定しないとどれだけ寿命が延びるかを検証。家電だけでも機種が多く、ケーブルが大量に使われている。生産技術センターの森本淳主任研究員は「シミュレーション技術でどの対策をすると有効かがすぐ判明する。製品の開発期間の短縮に貢献したい」と話す。
施行から10年もまだ社内で重要性を理解してもらえない
RoHSは施行から10年近くになる。違反例はないが、対応が完璧という訳ではない。東京都立産業技術研究センターで化学物質規制対応を支援する五十嵐美穂子輸出製品技術支援センター長は「今でも初心者からの相談が多い」と打ち明ける。基礎セミナーを告知するとすぐに満席になるという。
企業では当初の担当者が引退の時期に入ったが、後任者に十分な引き継ぎがないことがある。「社内で重要性を理解してもらえず、対応が進まない」(五十嵐センター長)という相談もある。
大手企業から中小企業への過度の要求も後を絶たない。ある中小企業が、ネジからドライバーに付着した物質が製品に移っていないか調査するように求められたという。松浦氏は「可能性はゼロではないが、考慮するほどではない」と話す。
大手企業でも調達担当者がRoHSを理解しているとは限らない。中小企業は取引継続のため従わざるを得ないという。大企業、中小企業とも負担軽減のためにRoHSを再確認すべきだろう。
(文=松木喬)
日刊工業新聞2015年08月11日 深層断面