ニュースイッチ

若者はクルマ離れしていない!シェアサービス利用をけん引

MaaSが台頭
 近年、乗り物のサービス化「MaaS」が注目されている。全ての交通網がクラウド化され、利用者がスマートフォンなどの端末から一括して最適な移動手段を検索、予約、決済まで行えるため、利用者の利便性向上が期待される。自動車業界の課題とされる「若者のクルマ離れ」を背景とした自動車販売台数の落ち込み軽減策としても期待される。こうしたなか、MaaSの一つとして、自動車シェアサービス市場が確立されつつある。

 同市場のサービス内容としては「カーシェア」「ライドシェア」「バイクシェア」「シェアサイクル」「駐車場シェア」「自動バレーパーキング(自動駐車)」などがあげられる。

 2017年の規模は、カーシェアが車両台数2万8800台で会員数130万3400人、ライドシェアが加入者数11万7000人、シェアサイクルが車両台数9200台、駐車場シェアが駐車場数10万8000カ所で加入者数が100万人と、全体的に市場規模は小さい。

 自動バレーパーキングは、車両側とインフラ側の標準化が必要となり、車両側は自動運転レベル4を必要とするため、17年時点では実績がない。だが、自動運転の先鞭(せんべん)として、早ければ25年頃から商業施設などで利用できるようになる。

 若者のクルマ離れが危惧されている一方、運転免許の新規取得数は順調に伸びている。このため、維持費用や駐車場の有無などの理由から、自動車を保有しない若者が一定数存在していることが想定される。

 このような市場環境下で、使いたい時に使いたい分だけ利用する「カーシェア」は、若者を中心に利用者がここ数年で急増するなど、提供側と利用者側のニーズが合致した例といえる。

 また、「駐車場シェア」は一般に予約できない時間貸し駐車場を事前予約することができるサービスであり、利用当日に駐車場確保が困難なイベント会場付近などで駐車場を探せるサービスとして、ここ数年で利用者が急増している。この二つのシェアサービスは、利用者の「あったらいいな」をうまく具現化したビジネスとして成立する方向性を見いだした好事例である。

 MaaSは、短期的な黒字化が見込めずビジネス化が難しいと認識され始めている。単に移動手段ではなく、利用の中心となり得る若年層にもニーズが合致するようなサービスを提供しなければ、日の目をみることなくついえてしまう。電動車技術をけん引し、「まごころ」を大切にする日本が、モビリティ革命であるMaaSでも台頭してほしい。
                      

(文=饗場知<富士経済名古屋支社>)
日刊工業新聞2019年3月27日

編集部のおすすめ