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引き合い続々の調理ロボット、原点は外食産業勤務?

開発会社社長インタビュー
引き合い続々の調理ロボット、原点は外食産業勤務?

タニコーとハンバーグ調理ロボを開発した

 調理ロボットの開発を手がける、コネクテッドロボティクス(東京都小金井市、沢登哲也社長、03・4520・5786)の展開が急だ。ハウステンボス(長崎県佐世保市)で稼働している、たこ焼きロボット、ソフトクリームロボットに続き、最近では朝食ロボットやコンビニエンスストアのホットスナックロボット、さらには大手厨房(ちゅうぼう)機器メーカーと共同で皿洗いロボットやハンバーガー焼きロボットなどを相次いで開発。事業拡大と人材育成をどう両立させるか。沢登社長に聞いた。(編集委員・嶋田歩)

―ここへ来て新ロボット開発が急ですね。

「おかげさまで、いろいろな厨房機器大手から、開発の引き合いが来ている。業界の人手不足とともに、ロボットの認知が一般に広まってきたことが大きい。当社がたこ焼きロボットを開発したのが2017年4月。その直後、米国や中国など海外で調理ロボの開発が一気に進んだ。まさに間一髪のタイミング。開発が早かったおかげで調理ロボは当社というイメージが強まり、内外から多数の就職応募が来る」

―海外と日本で、ロボ開発の違いはありますか。

「米中で登場しているハンバーガーロボやコーヒーデリバリーロボなどは、個別技術で見ると大したことはない。全体最適化というか、既存技術をうまくコーディネートして使いやすい商品に仕上げる。日本はそういう発想法が苦手だ。技術を熱心に追求するのはいいが、そこで満足し、実験レベルで終わってしまう。あくまで使える商品にしてこそ意味を持つ。従業員には『実証実験を言い訳にするな』と言っている」

―目指す開発像は。

「技術の視点に加え、生活スタイルやカルチャーなど利用者の視点で、『こんなのがあれば便利なのに』と構想し、ロボットをつくる。20代など若手の方が、新しいものを受け入れる柔軟発想がある。人工知能(AI)や画像認識などの関連技術は年々進歩している。現在の技術や過去の経験にとらわれていると新ロボットの開発はできない」

―米中も含め、技術者の囲い込みも激しくなっているのでは。

「ロボットのアルゴリズムのほかに機械や電子、ハードウエアの知識、飲食業のマーケティングセンスなど要求水準がどんどん高くなっており、人材確保は急務。内外への積極的なアピールと同時に、必要に応じて他社と協業も図る。知財の管理も強化する。20年までは国内を中心に省人化ロボ開発を進めるが、そこから先はアジアなど海外でもロボットを展開したいと思っている」

【ポイント/活躍の舞台、海外に】

 沢登社長は大学院を卒業して会社を立ち上げる以前に、外食企業に勤めた経験を持つ。長時間労働や肉体労働など、業界の現状を肌で知り「ロボットの世界へ戻った」。現場での使いやすさを考える視点はこのころに生まれたのかも知れない。外食業界の人手不足は世界共通。活躍舞台が海外に広がる日も遠くはない。英語能力やコミュニケーション能力がますます重要になる。
日刊工業新聞2019年4月4日

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