ニュースイッチ

漂流ゴーン問題でじわり輝き始めた「三菱」ブランド

日産・ルノーの主導権争い、益子CEOが仲裁役で存在感
漂流ゴーン問題でじわり輝き始めた「三菱」ブランド

益子CEOは連合トップと対話を重ねた

 日産自動車、仏ルノー、三菱自動車の3社トップとして連合を束ねたカルロス・ゴーン被告の退場で、日産とルノーの間で勃発した主導権争い。その“仲裁”で重要な役割を演じたのが、三菱自の益子修最高経営責任者(CEO)だ。数々の難局を乗り越えた経験豊富な益子CEOが西川広人日産社長、ルノー会長のジャンドミニク・スナール氏を対話に導いた。

 「自社の不祥事など難局を乗り越えてきただけに、こうした危機的状況を立て直すことに関しては百戦錬磨だ」。三菱自と長年にわたり取引するサプライヤー幹部は、一連のゴーン問題での益子CEOの立ち回りをこう評価する。

 ゴーン被告逮捕後の4カ月間、益子CEOが意識したのは、トップ同士のこまやかな対話を重ねることだった。西川社長とはゴーン被告逮捕以降、頻繁に電話で連絡を取り合うなど連携を欠かさなかった。

 三菱自としても不正調査の共有やゴーン被告の会長職解任などで、日産と足並みをそろえることを徹底した。また、益子CEOはスナール氏がルノー会長に就任した直後に電話会談し一気に距離を詰めた。スナール氏の初来日時は、三菱自株主として名を連ねる複数の三菱グループ首脳との面談を設定。利害関係者を巻き込む形で融和の土台を作った。

 また、3社連合の中で三菱自の存在感は高まっている。大手自動車メーカーが米中市場の減速に頭を悩ませる中、三菱自は抜群のブランド力を誇る東南アジア市場で大きな収益をあげる。加えて米国市場や高級セダンから撤退するなど選択と集中をおおむね完了しており、戦略が明確であることも強みだ。

 一連のゴーン問題は、こうした三菱自の特色を連合内で再認識する契機になった。日産、ルノーという大手2社との連合の中で埋没しかねない三菱自だが、日産・ルノー間の調整役としての能力と、東南アジア戦略を担う企業としての実力を高め、独自の地位を築き上げれば、3社連合、三菱自の双方にとってウィン―ウィンとなる。
(文=後藤信之、渡辺光太)
日刊工業新聞2019年3月21日

編集部のおすすめ