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金属にCNTを高密度定着、表面処理の進化は何をもたらすか 

ワイピーシステムが開発、自動車や航空機関連にも
金属にCNTを高密度定着、表面処理の進化は何をもたらすか 

表面処理で金属箔にCNTを高密度で定着させ、シート状の製品にすることも計画中

 ワイピーシステム(埼玉県所沢市、吉田英夫社長、04・2968・5700)は、金属にカーボンナノチューブ(CNT)を均等に高密度で定着させる表面処理技術を開発した。CNTの持つ高い導電性や熱放散性といった機能を金属の皮膜表面に持たせられる。例えば、船体に貝殻などが付着するのを抑えたり、高熱で塗料が使えない場所への塗装を可能にしたり、多様な用途を想定している。

 埼玉県産業振興公社や東京農工大学、久保井塗装工業所(埼玉県狭山市)などとの産官学連携でコンソーシアムを組織し、共同開発した。現在、船舶や航空機、エネルギー、防衛産業など複数の業界でサンプル品を評価試験中。早期の実用化を目指す。CNTを含む皮膜の厚さは20マイクロメートル。コストを抑えるため、金属箔に皮膜し、シート状で提供することなども計画している。

 ワイピーシステムは金属表面に皮膜後、その上に塗装やフッ素樹脂加工などを施しても「完全に密着し、絶対にはがれない。金属を折り曲げても大丈夫」(吉田社長)という独自のメッキ技術「低温黒色クロム(CBC)」を持つ。

 このほどCBC皮膜の微細な結晶の隙間に、直径10ナノ―15ナノメートルの多層CNTが入り込む性質を発見。「相性の良いCNTを探し、トライアンドエラーを繰り返しながら、CNTが高密度層を自然に形成する」(同)手法を確立した。CNTを含む皮膜の上に塗装やフッ素樹脂加工など2次皮膜を重ねてもCNTの特性は変わらない上、「絶対にはがれないCBCの特性も維持される」(同)という。

 金属表面に導電性を持たせることで、海洋を航行する船舶や排水溝に貝殻などの海洋生物を付きにくくできる。「導電率の抵抗を制御することでヒーターにもなり、寒冷地の信号機に使えば融雪対策になる」(同)という。

 熱放散性を高めることで自動車のマフラーやブレーキキャリパーなど高熱にさらされる部分にもカラー塗装できるほか、航空機の熱交換器や真空ポンプの回転ブレードの耐熱性向上など、広範な用途に展開できると見ている。

日刊工業新聞2019年3月21日

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