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経営問題にも…墜落事故でボーイング「737MAX」増産に暗雲

原因究明急ぐ
経営問題にも…墜落事故でボーイング「737MAX」増産に暗雲

日本勢の「737MAX」の機体製造への参画比率は数%とみられる(ボーイング提供)

 米ボーイングは小型機「737MAX」の墜落事故で、受注の大半を占める小型機市場で競争力を失う危機に直面しそうだ。欧州エアバスの小型機「320neo」と受注を競う中で、墜落事故は痛恨と言える。受注キャンセルの連鎖が起きれば、737MAXの増産計画に暗雲が漂う。日本メーカーの参画は少なく、影響は限定的とみられるが、ボーイングの経営問題にも発展しかねず予断を許さない。

 エチオピア航空が運航中の737MAXが10日墜落し、157人が死亡。2018年10月にもインドネシアのライオン航空で同機が墜落し、189人が死亡している。17年5月に「737」の後継機として就航し、好調に受注を積み重ねる中で墜落事故が相次ぎ、信頼が揺らいでいる。

 座席数200程度の小型機は東南アジアなどの格安航空会社(LCC)が大量購入しており、航空機市場の主戦場になっている。737MAXは2月末時点で4636機の受注残があり、ボーイング全体の約8割を占める。墜落事故を受け、欧州や中国、アジア諸国で737MAXの運航停止が起きている。今後、航空会社による受注キャンセルに発展すれば、大打撃だ。

 日本メーカーは中大型機「787」の機体製造の約35%を、次期大型機「777X」の21%をそれぞれ担っている。一方、737MAXでの比率は低い。ボーイングが正確な数値を算出していないほどで、「おそらく数%」(ボーイングジャパン)とみられる。

 川崎重工業は06年まで737の主翼リブを生産したが、737MAXには参画していない。三菱重工業は主翼の可動翼(インボード・フラップ)を手がけるが、787の主翼全体のような規模ではない。SUBARU(スバル)も水平尾翼の昇降舵のみで、中央翼は手がけていない。そのため各社は「売り上げに占める割合は大きくない」と静観する。

 一方で、影響が懸念されるのが装備品だ。ナブテスコはボーイングの主要機種に飛行姿勢制御装置(アクチュエーター)を納入しており、737MAXは1機当たり8台。ナブテスコは約50億円を投じて岐阜工場(岐阜県垂井町)に新棟を完成させており、737MAXと777X向けで年内の生産本格化を見込んでいる。

 ボーイングは19年中に737MAXの月産機数を5機増の57機に増やす計画だが、キャンセルが相次げば計画の修正を迫られる恐れがある。既にボーイング株は下落し、トランプ米大統領が運航停止を命じるなど影響が広がっている。墜落原因の調査が進められており、原因究明と再発防止策が求められる。
(文=名古屋・戸村智幸)
日刊工業新聞2019年3月15日

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