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親族外承継という選択肢「事業引継ぎ」と向き合う

後継者不在による廃業防げ
親族外承継という選択肢「事業引継ぎ」と向き合う

7月末に都内で開かれた「事業引継ぎ全国セミナー」には多くの関係者が来場

 

継承にさまざな選択肢。マッチングに課題残る


 後継者不在の中小企業の事業を起業意欲のある社外の人材や他の会社に引き継ぐことを「事業引継ぎ」と総称し、国はさまざまな施策を講じてきた。とりわけ、中小企業を専門とするM&A仲介は民間企業にとって採算に乗りにくく、ビジネスとして育ちにくいことから国が施策強化を通じて支援する姿勢を鮮明にする。

 専門家が中立的な立場で事業承継に関わる無料相談に応じる「事業引継ぎ支援センター」を全国31カ所に設置。2015年度中には全ての都道府県に拡大する予定だ。

 後継者となって第2創業に取り組む人材を紹介する「後継者人材バンク」の構築にも乗り出している。既存の「事業引継ぎ支援センター」に人材バンク機能を持たせ、後継者難の問題に直面する中小企業と、事業を興したい創業予備軍を橋渡しする。地域金融機関が開催する起業セミナーなどの参加者などに登録を働きかけている。

 この3月には中小企業・小規模事業者のM&Aに特化した初のガイドラインも策定。事業引き継ぎの流れや留意点、トラブル時の対応などを定め、M&Aに対する抵抗感の払拭(ふっしょく)や仲介業者の新規参入に努めている。

 ただ、11年の「事業引継ぎ支援センター」の開設から4年弱。全国で5000件を超える相談に対し、成立件数は152件にとどまる。経済産業省・中小企業庁では「マーケットの大きさからすればまだまだ成果が少ない」と指摘。「センター」の利用促進に加え、地域の枠を超えた全国規模での事業マッチングをどう実現するかも課題だ。

 後継者を確保できなかったオーナー社長が突然、会社清算を発表し、取引先や従業員が困惑するケースは珍しくないという。中小企業は地域経済の担い手―。承継にはさまざまな選択肢があることをまず認識し、そのなかで最適な手段を検討することが円滑な事業承継の第一歩となる。
 
日刊工業新聞2015年08月10日 中小・ベンチャー・中小政策面
神崎明子
神崎明子 Kanzaki Akiko 東京支社 編集委員
現経営者の「引退」を連想させる事業承継は、家族でもなかなか話題にできないとよく聞きます。東京都事業引継ぎ支援センターの玉置さんの言葉、「経営者の最後の仕事とは後継者探し」との指摘は印象的です。

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