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未達で終わった宮永改革、次期社長が引き継ぐ三菱重工の“きぼう”

泉沢氏が就任、「自ら壁を作っている。まだまだ力を出せる」
未達で終わった宮永改革、次期社長が引き継ぐ三菱重工の“きぼう”

泉沢次期社長(左)と宮永社長

 三菱重工業は6日、4月1日付で泉沢清次取締役常務執行役員(61)が社長に昇格する人事を発表した。最高経営責任者(CEO)と最高戦略責任者(CSO)を兼務する。宮永俊一社長(70)は代表権のない会長に就く。技術系トップは6年ぶり。

 日立製作所との火力発電事業の統合をはじめ、矢継ぎ早の構造改革で三菱重工を真のグローバル企業に変革することに全精力を注いできた宮永社長の後を継ぎ、泉沢次期社長には急激な技術革新を好機と捉えた新たなビジネスモデル構築が期待される。

 同日会見した泉沢次期社長は「責任は重いが非常にやりがいがある。事業特性に適したグローバルグループ経営を実現し、将来ビジョンを描きまい進することで持続可能な高収益企業を目指す。多様な人材を生かし、枠を超えた取り組みを進めたい」と抱負を述べた。

 三菱重工は社長交代に至る役員指名・報酬諮問会議での議論のポイントを公開。顧客・技術の本質的な理解力やM&A(合併・買収)を成功に導く調和能力、指導力、リスクマネジメント力、挑戦力などが上げられた。

 宮永社長は「多様性」「透明性」を重視した上で「従来の考えに捕らわれない若さが必要」と説明。自身の年齢を引き合いに「時代の流れに応じ、70代の体を30―40代に維持できるように」と表現する形で、事業ポートフォリオの継続的改革の重要性を訴えた。

 4月以降、三菱重工の成長戦略は泉沢新社長が主導する。ただ開発が佳境に差し掛かる国産ジェット旅客機「MRJ」や、南アフリカで建設が進められている石炭火力発電所に関する日立製作所との訴訟など、懸案事項への対処は宮永社長が会長として責任を持って前面に立つ。

 事業規模5兆円を掲げてまい進してきた宮永社長。未達で終わったことを「誠に遺憾」とした。だが仏アルストムのエネルギー事業買収を巡り、ライバルのシーメンスと共同戦線を張り、米GEに対抗した姿は、三菱重工の変革を象徴した。

 祖業である商船事業の分社など、過去のしがらみにとらわれない改革が安定志向の企業風土を変えたのも間違いない。

 泉沢次期社長は「本来の実力を発揮できてない。自ら壁を作っている。まだまだ力を出せる。リードするのが我々の課題だ」と意気込む。

次期社長の素顔は?


 中学生から嗜(たしな)んできた剣道の腕は教士7段。現在も週1回は道場に通う。竹刀を構え相手と対峙(たいじ)し、集中することで日頃の緊張感から解放される。

 若手時代に国際宇宙ステーションの日本実験棟「きぼう」の計画立ち上げに参加。“オールジャパン”体制で欧米を相手に日本の存在感をいかに発揮できるか議論した。

 技術企画部長として研究所の改革に携わる。700もの製品を持つと言われる三菱重工の技術全般に精通しているのが強みだ。

 2013年、軽自動車エンジンのオイル漏れ不具合で混乱していた三菱自動車に送り込まれる。組織のしがらみにとらわれず改善点を直言。課題対応力が宮永社長の目に留まり、トップマネジメント候補として再招集された。

 信条の「スピード」「着眼大局・着手小局」を胸に、三菱重工を成長軌道に乗せる。
(文=鈴木真央)

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