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<オピニオン>ANAがエアバスの超大型機を導入する日

<オピニオン>ANAがエアバスの超大型機を導入する日

2014年4月に初飛行したスカイマークのA380初号機(エアバスのプレスサイトから、PHOTO: P. Masclet, Master Films)


懸念、そして破たん


 「本当にあの会社(スカイマーク)はA380を買えるんだろうか」。冗談交じりにエアバス関係者が言うのを筆者が聞いたのは、11年7月。英ファンボローの国際航空ショーを取材した時だ。A380は総2階建てで、標準座席数は555席もある。「ジャンボ機」として親しまれたボーイングの747型機よりもはるかに大きく、エアバスは開発に3兆円以上かけたとされるが、販売は決して楽ではない。

 顧客にはドバイのエミレーツ航空やシンガポール航空など豊富な購買力を持つ航空会社が多いだけに、本当にスカイマークは6機も購入できるのか?エアバス関係者の指摘は、もっともだった。

 しかし、当時スカイマークは業績も絶好調。2004年就任の西久保前社長がけん引し、12年3月期の営業利益は約153億円、売上高に占める営業利益率は約19%。航空会社としては類いまれな高収益企業だった時期だ。機材の発注額こそ高額だが、羽田路線を中心とする「ドル箱」を有するゆえに、財務基盤は安定しているだろう、と筆者は考えていた(甘かったのだが)。

 エアバス関係者の"冗談"はその後、現実のものとなる。財務面への不安などから、スカイマークとエアバスは14年7月にA380の購入契約を解除。700億円以上の損害賠償を請求される可能性が明るみとなった。その後の展開は周知の通りだ。

 スカイマークは当初、JALに経営支援を要請したが国土交通省が難色を示し、徐々に資金繰りが苦しくなる中、ANAとの羽田発着の共同運航や投資ファンドの出資などが固まっていった。15年1月28日夜、スカイマークは東京地方裁判所に民事再生法の適用を申請、経営破たんした。

 破たん後の成り行きは省略するが、最大債権者の米リース会社から米デルタ航空をスポンサーとする支援案が出され、紆余曲折の末、一昨日8月5日、ANAスポンサー案に決着した。

ニュースイッチオリジナル
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
スカイマークが発注し、既にエアバスが製造してしまったA380の行く末について、考えました。

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