災害時の“言葉の壁”をなくせ!
緊急時における外国人向けサービスの開発が進んでいる
外国人労働者の受け入れを拡大する改正出入国管理法が4月に施行される。新たな在留資格を設けるもので、これにより政府は2025年に50万人の外国人労働者受け入れを目指す。一方、自然災害が多い日本では増加する外国人に対し、災害発生などの緊急時にいかに早く正しく情報を伝えるかが重要となる。受け入れ拡大と両立して“ことばの壁”を取り払うサービスが求められている。
「日本に住む全ての人に等しく安全を確保しなければならない」―。東京テレメッセージ(東京都港区)の清野英俊社長は声を大にする。同社はポケットベル(ポケベル)に使われる周波数280メガヘルツを使った防災無線向けサービスを手がける。自治体は災害発生時、配信用パソコンに被害状況や避難場所を入力すると各家庭に設置した受信機が音声や文字で伝える仕組みだ。
ポケベル波は地下や建物内でも受信する特性を持っており、被害状況や避難指示を伝える戸別受信機に活用される。11年の東日本大震災以降、自治体での採用が相次いでいるという。一方、現在は日本語のみに対応しているため「外国人から『(災害時に)自分たちはどうなるのか』という声が今後出てくるだろう」(清野社長)と懸念する。
そこで同社は英語や中国語、韓国語など5カ国語に対応した戸別受信機を開発している。担当者がパソコンに文字を入力すると、各家庭に設置した受信機が自動翻訳して読み上げる仕組み。19年中に提供する計画だ。
パナソニックはメガホン型翻訳機「メガホンヤク」を投入している。「落ち着いて避難してください」など事前登録した定型文を発声したりタッチパネルで選択したりすると、英語や中国語、韓国語で読み上げる仕組みだ。緊急時に状況が分からず困っている外国人に素早く避難誘導や状況説明ができるため、東京メトロや成田空港などで導入が進む。
一方、利用者は事前登録した定型文はおおかた覚える必要があるという。パナソニックコネクティッドソリューションズ社の田中和之翻訳・AIサービス開発室長は「使いこなすには時間がかかることもある」と話す。利用者が限られる恐れがあるというわけだ。
そこでパナソニックは現在、意味が類似している単語を発音すれば定型文と自動照合して読み上げる機能の開発を進めている。例えば「逃げてください」と「避難してください」、「自動車」と「車」、「電車」と「汽車」などだ。
緊急時の混乱した状況下でも多くの人が素早く外国人に情報を伝えられるとして、早期の実用化を目指す。
深刻な労働力不足を背景に、労働現場では外国人労働者に期待する声も聞かれる。一方、並行して受け入れ態勢を充実させることが不可欠だ。単なる労働力としてとらえるのではなく、ともに生きることを前提としたインフラ整備が必要となりそうだ。
(文=大城蕗子)
「日本に住む全ての人に等しく安全を確保しなければならない」―。東京テレメッセージ(東京都港区)の清野英俊社長は声を大にする。同社はポケットベル(ポケベル)に使われる周波数280メガヘルツを使った防災無線向けサービスを手がける。自治体は災害発生時、配信用パソコンに被害状況や避難場所を入力すると各家庭に設置した受信機が音声や文字で伝える仕組みだ。
ポケベル波は地下や建物内でも受信する特性を持っており、被害状況や避難指示を伝える戸別受信機に活用される。11年の東日本大震災以降、自治体での採用が相次いでいるという。一方、現在は日本語のみに対応しているため「外国人から『(災害時に)自分たちはどうなるのか』という声が今後出てくるだろう」(清野社長)と懸念する。
そこで同社は英語や中国語、韓国語など5カ国語に対応した戸別受信機を開発している。担当者がパソコンに文字を入力すると、各家庭に設置した受信機が自動翻訳して読み上げる仕組み。19年中に提供する計画だ。
パナソニックはメガホン型翻訳機「メガホンヤク」を投入している。「落ち着いて避難してください」など事前登録した定型文を発声したりタッチパネルで選択したりすると、英語や中国語、韓国語で読み上げる仕組みだ。緊急時に状況が分からず困っている外国人に素早く避難誘導や状況説明ができるため、東京メトロや成田空港などで導入が進む。
一方、利用者は事前登録した定型文はおおかた覚える必要があるという。パナソニックコネクティッドソリューションズ社の田中和之翻訳・AIサービス開発室長は「使いこなすには時間がかかることもある」と話す。利用者が限られる恐れがあるというわけだ。
そこでパナソニックは現在、意味が類似している単語を発音すれば定型文と自動照合して読み上げる機能の開発を進めている。例えば「逃げてください」と「避難してください」、「自動車」と「車」、「電車」と「汽車」などだ。
緊急時の混乱した状況下でも多くの人が素早く外国人に情報を伝えられるとして、早期の実用化を目指す。
深刻な労働力不足を背景に、労働現場では外国人労働者に期待する声も聞かれる。一方、並行して受け入れ態勢を充実させることが不可欠だ。単なる労働力としてとらえるのではなく、ともに生きることを前提としたインフラ整備が必要となりそうだ。
(文=大城蕗子)