部品サプライヤーの生きる道。より完成車メーカーに近づく?それともサービス会社に?
パナソニックらはMaaSで稼げる?
自動車業界の大きな新潮流になった、乗り物のサービス化「MaaS」。その専用車両の開発で、自動車部品メーカーが存在感を高めている。シェアリングや移動店舗など幅広いサービス内容で多様な車両が求められるほか、高稼働に耐えうる耐久性や安全性、快適性が欠かせない。完成車メーカーの開発資源だけでは足りず、部品メーカーの役割は増す。MaaSへの参入を目指すIT企業も頼る。“次世代商用車”をめぐり部品メーカー同士の競争も激しくなる。
パナソニックはMaaS向けで自動運転技術を備えた電気自動車(EV)のコンセプトカー「スペイシー」を2018年10月に公開した。同社が採用を狙うのがスペイシーのプラットフォーム(車台)に搭載した駆動システムだ。
インバーターやモーター、DC/DCコンバーター、充電器などEVに必要な部品を一つにまとめたのが特徴。小型で車体に部品を個別に搭載するより、設置スペースを削減できるため、パナソニックは、その分低床にでき、車室空間をより広く確保できる利点がある、としている。
最新型は出力18キロワットと低速で走行するMaaS用の車両に対応できるパワーを持たせた。20年の量産化を目指している。
独シェフラーもMaaS向けの駆動システムを開発した。インホイールモーター、サスペンション、タイヤの向きを変えるアクチュエーターなどを統合したシステムで、各タイヤを独立制御したり、タイヤの向きを最大90度まで動かしたりできる。小回りがきき、狭い場所での安全な走行や駐車に適している。
一方、独ボッシュは部品だけでなく、車両の保守・管理業務に役立つ技術を提案する。
現地時間8日に米ラスベガスで開幕する家電・IT見本市「CES」ではMaaS向けのコンセプトカーを発表する。センサーを使った車両故障の予測診断技術や走行に必要なソフトウエアが最新版かどうかを自動判定し、必要に応じてソフトをアップデートする技術を紹介する。MaaS事業者はクラウドを介して車両の状態を常に把握し、日々安全な車両を運用できるようになる。
MaaSは「モビリティー・アズ・ア・サービス(サービスとしてのモビリティー)」の頭文字をとったもので、専用車両を用いてライドシェアや移動型店舗といったさまざまなサービスを提供する。完成車メーカーやIT大手が相次いで参入を表明し、トヨタ自動車は18年10月にソフトバンクとMaaS事業の新会社「モネテクノロジーズ」を設立すると発表した。
MaaS事業の運営に欠かせないのが専用車両だ。トヨタが18年のCESで発表した「eパレット」のように自動運転技術を備えたEVが主流になる見通しで、トヨタをはじめ、完成車メーカー各社が開発を進めている。
専用車両は運転者不要で1日の稼働率が高く、多様なサービス用途で使われる新しいタイプの“商用車”といえる。このため、長時間使用に耐えられる耐久性、子どもから大人まで誰もが快適に過ごせる居住性、幅広い用途に対応できる汎用性が問われる。
ただ完成車メーカー1社がMaaSのサービスから車両開発まで担うのは負担が大きく難しいため、部品メーカーが持つ車両向けの技術提案への期待が高まっている。部品各社が部品のシステム化、車両管理技術などの開発に積極的に取り組むのは、こうしたニーズに対応するためだ。
また完成車メーカーだけでなく、IT系ベンチャー企業など車づくりに知見のない企業が事業参入を虎視眈々(たんたん)と狙っている。部品メーカーの技術を使えば短期間で車両を用意し、事業を始められる可能性があり、部品メーカーはこうしたニーズも取り込む考えだ。
ナカニシ自動車産業リサーチの中西孝樹代表兼アナリストは「高品質な専用車両の提供がMaaSの競争力を左右する」と指摘する。MaaSはサービス内容が注目されがちだが、ユーザーにとって価値のあるサービスを創出できたとしても車両が安全性や快適性を備えていなければ事業継続は難しい。部品各社が果たすべき役割は大きく、新しい収益源に育てるチャンスが訪れている。
(文=下氏香菜子)
20年量産化
パナソニックはMaaS向けで自動運転技術を備えた電気自動車(EV)のコンセプトカー「スペイシー」を2018年10月に公開した。同社が採用を狙うのがスペイシーのプラットフォーム(車台)に搭載した駆動システムだ。
インバーターやモーター、DC/DCコンバーター、充電器などEVに必要な部品を一つにまとめたのが特徴。小型で車体に部品を個別に搭載するより、設置スペースを削減できるため、パナソニックは、その分低床にでき、車室空間をより広く確保できる利点がある、としている。
最新型は出力18キロワットと低速で走行するMaaS用の車両に対応できるパワーを持たせた。20年の量産化を目指している。
独シェフラーもMaaS向けの駆動システムを開発した。インホイールモーター、サスペンション、タイヤの向きを変えるアクチュエーターなどを統合したシステムで、各タイヤを独立制御したり、タイヤの向きを最大90度まで動かしたりできる。小回りがきき、狭い場所での安全な走行や駐車に適している。
保守・管理業務も
一方、独ボッシュは部品だけでなく、車両の保守・管理業務に役立つ技術を提案する。
現地時間8日に米ラスベガスで開幕する家電・IT見本市「CES」ではMaaS向けのコンセプトカーを発表する。センサーを使った車両故障の予測診断技術や走行に必要なソフトウエアが最新版かどうかを自動判定し、必要に応じてソフトをアップデートする技術を紹介する。MaaS事業者はクラウドを介して車両の状態を常に把握し、日々安全な車両を運用できるようになる。
MaaSは「モビリティー・アズ・ア・サービス(サービスとしてのモビリティー)」の頭文字をとったもので、専用車両を用いてライドシェアや移動型店舗といったさまざまなサービスを提供する。完成車メーカーやIT大手が相次いで参入を表明し、トヨタ自動車は18年10月にソフトバンクとMaaS事業の新会社「モネテクノロジーズ」を設立すると発表した。
MaaS事業の運営に欠かせないのが専用車両だ。トヨタが18年のCESで発表した「eパレット」のように自動運転技術を備えたEVが主流になる見通しで、トヨタをはじめ、完成車メーカー各社が開発を進めている。
専用車両は運転者不要で1日の稼働率が高く、多様なサービス用途で使われる新しいタイプの“商用車”といえる。このため、長時間使用に耐えられる耐久性、子どもから大人まで誰もが快適に過ごせる居住性、幅広い用途に対応できる汎用性が問われる。
高品質な車両、競争力左右
ただ完成車メーカー1社がMaaSのサービスから車両開発まで担うのは負担が大きく難しいため、部品メーカーが持つ車両向けの技術提案への期待が高まっている。部品各社が部品のシステム化、車両管理技術などの開発に積極的に取り組むのは、こうしたニーズに対応するためだ。
また完成車メーカーだけでなく、IT系ベンチャー企業など車づくりに知見のない企業が事業参入を虎視眈々(たんたん)と狙っている。部品メーカーの技術を使えば短期間で車両を用意し、事業を始められる可能性があり、部品メーカーはこうしたニーズも取り込む考えだ。
ナカニシ自動車産業リサーチの中西孝樹代表兼アナリストは「高品質な専用車両の提供がMaaSの競争力を左右する」と指摘する。MaaSはサービス内容が注目されがちだが、ユーザーにとって価値のあるサービスを創出できたとしても車両が安全性や快適性を備えていなければ事業継続は難しい。部品各社が果たすべき役割は大きく、新しい収益源に育てるチャンスが訪れている。
(文=下氏香菜子)
日刊工業新聞2019年1月1日掲載