キーマンに聞く、米レッドハット買収でIBMが得た最大の価値

レッドハット・リナックス担当バイスプレジデント、ステファニー・チラス氏インタビュー

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巨額買収が注目のIBMのロメッティCEO(右)とレッドハットのジム・ホワイトハースト社長兼CEO
 334億ドル(約3兆8000億円)の大型買収により、オープンソースソフト(OSS)の雄、米レッドハットは米IBMの傘下に入る。買収完了は2019年後半。これと前後してIT業界がどう動くのかが注目される。米レッドハットのリナックス担当バイスプレジデントであるステファニー・チラス氏に買収が及ぼす影響や今後の展望を聞いた。

―IBMによる買収は金額も含め、どう受け止めていますか。
「当社はオープンソースをベースに、複数の選択肢をお客さんに提供し、業界にイノベーションをもたらしてきた。オープンハイブリッドクラウドの実現にはさまざまな選択肢が必要。このスタンスはこれからも変わらず、それこそがIBMが得た最大の価値だ。当社からみると、IBMも選択肢の一つだ」

―IBMの傘下に入ることで、今後の立ち位置が気になります。
「オープンソースは当社のDNAでもあり、その価値とはオープンソースをエンタープライズ向けに使える形にすることだ。IBMはその価値を理解し、あれだけの金額を支払うことに合意した。当社の成功はIBMにとっても長期的に一番よいことであり、それが市場や業界に対して提供できる最も大きな価値だ」

―産業界にとってオープンソースはどのような役割を担いますか。
「オープンソースのプロジェクトを通して、開発コミュニティーが生まれ、イノベーションを生み出している。企業にとっても開発者にとっても、大きな意味がある」

―迅速なアジャイル開発などを実践する場として「オープンイノベーションラボ」を展開しています。
「デジタル変革ではアプリケーション(応用ソフト)の統合までをいかに迅速に実行するかがカギとなる。我々の業界にとって最も重要なのは時間だ。オープンイノベーションラボの役割は当社の幅広い製品やツール群を使い、お客さんが抱えている課題を迅速に解決することだ」

―具体的には。
「オープンソースの文化でお客さんと一緒にチームを作り、エンゲージメント(信頼関係)を実現する。スピードだけではなく、文化を変えることで、将来のイノベーションの素地も作れる。日本ではふくおかフィナンシャルグループが先駆ユーザーであり、世界的にみても先進例だ」

―SI(システム構築)事業者などパートナーとの協力も必要です。
「日本ではSI事業者の信頼が高く、そこは重要な取り組みだ。インフラやアプリを別に考えていてはデジタル変革はうまくいかない。インフラもアプリも統合して、初めてイノベーションが提供できる」

ステファニー・チラス氏

(聞き手・斉藤実)

日刊工業新聞2018年12月24日

COMMENT

チラス氏はIBM出身で、プロセッサーの設計からシステムアーキテクチャー(設計概念)、クラウドスタック、人工知能(AI)まで幅広い領域で経験を積んできた。レッドハットへの転身は8月。時期的にみてIBMとレッドハットの双方のDNAを融合させるキーマンとして、買収に先駆けて着任した可能性もあり、手腕に期待したい。(編集委員・斉藤実)

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