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大手参入で構図が一変、2019年は認知症保険市場が加熱する

販売成否の左右するのは?
大手参入で構図が一変、2019年は認知症保険市場が加熱する

写真はイメージ

 2019年の認知症保険市場は競争が激化しそうだ。認知症保険は16年に太陽生命保険が業界に先駆けて商品化、これまで中小生保会社を中心に参入が相次いできた。長寿化に伴って認知症が社会課題となる中で、各社は堅調な販売を続けている。だが、18年11月、第一生命保険が大手で初めて商品投入を表明したことで構図が一変した。

 認知症保険は保障対象を認知症に絞ることで保障を手厚くしながらも、保険料を抑えた商品。従来の保険は死亡や病気による入院などを幅広く保障するものが一般的だ。高齢者が大幅に増加する25年の認知症患者は、今の約1・5倍の約700万人に増加するとの試算がある。全国民の65歳以上の5人に1人が認知症患者になる計算だ。認知症患者の急増を受けて、保険で万が一の経済的な負担の増加に備えようとする意識が高まっている。

 「これまでも販売競争はあったが、大手の参入で(競争は)別次元のものになるかもしれない」。認知症保険を販売する生保幹部は第一生命が市場参入を発表したことを受け、厳しい表情をみせた。大手の参入は予想していたとしながらも、「(大手が強みとする)大勢の営業職員による販売攻勢をかなり警戒している」という。

 従来の認知症保険は認知症と診断された際の一時金の支給などが主流だったが、高度なヘルスケア技術を取り入れながら認知症の早期発見や予防などを支援する商品が目立つようになった。第一生命も新商品に目の動きで認知症を早期発見するサービスを付帯させた。米シリコンバレーのスタートアップ企業が開発した技術を採用した。「保障を充実しただけでは認知症保険は売れない時代に突入しつつある」。別のある生保関係者は第一生命の新商品を分析しながら、こう指摘した。

 別の大手を含め認知症保険への参入は今後も続く見通し。競争激化の中で、保障以外の付加価値をどれだけ充実させて訴求できるか。これが販売の成否を大きく左右しそうだ。
(文=小野里裕一)
日刊工業新聞2018年12月19日

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